■トランプ大統領の政策に右往左往する各国政府■

 4月末に大統領就任100日間の「ハネムーン期間」が終わります。米国では新政権誕生後100日間は新政権に期待する支持者の声が維持されます。問題はその後です。そこからはこの100日間に行われた政治に対する批判が巻き起こる期間になります。歴代大統領は何とかこの期間に支持率を上げるべく様々な政策を打って来ました。トランプ大統領も就任早々様々な大統領令に署名して世間の関心を引いていますが、WHO脱退やパリ協定離脱といった世界的には顰蹙を買う行為も相次いでいます。

 通常このハネムーン期間は株式市場も概ね好調で推移するのが通例でしたが今回は趣が異なるようです。NY市場は連日の下落で4万ドル割れ目前ですし、東京市場も3万6千円をあっという間に下回って来ました。各国に対する関税アップを引き金とする米国の景気後退予想が足を引っ張っているようです。 しかし予想されたことではありますが、あまりに思いつきの発言が多いと思います。日米安保条約についても「米国は日本を守らなければならないが、日本は米国を守る必要が無くて不公平だ」と言い出しました。

 また為替についても「日本と中国は為替介入をして通貨安にしている」と発言しました。中国はともかく日本は円高への為替介入は行いましたが、過去何年も円安への為替介入を行ったことはありません。実際のデータの裏付け無しに唐突にこのようなことを言い出す首脳はいません。トランプ大統領のスタッフも、もう少し事前情報を与えるべきだと思います。誰一人としてトランプ大統領の側近に「殿ご乱心」と言って諫める人間がいません。世界中が、ただただ4年間嵐が過ぎ去るのを待っています。

・ウクライナ外交大失敗 前代未聞の首脳口論・

 ウクライナのゼレンスキー大統領がトランプ大統領を怒らせてしまいました。まず開口一番、米国の多大な軍事援助に対する深い感謝から始めなければいけなかったのに、対等な立場で会談を始めてしまいました。それに不満を感じたバンス副大統領の挑発にのって口論を始めたので、それまで我慢していたトランプ大統領を怒らせてしまいました。会見の場で涙していた駐米ウクライナ大使の姿が印象的でした。

 公開の場でのこれだけ激しい首脳同士の口論は見たことも聞いたこともありません。ウクライナ外交団の完全な準備不足です。通訳を使わなかったことも失敗の原因です。石破外交団と対照的です。後から聞いてみると、石破総理の通訳は発言を直訳せずに、かなりトランプ大統領好みに通訳していたそうです。何といってもゼレンスキー大統領はトランプ大統領に口答えしてはいけませんでした。これまでの3年間で米国は欧米諸国の合計額を上回る20兆円の軍事支援を行って来ました。もしトランプ大統領がこれ以上の軍事援助とスターリンクの提供禁止を打ち出せば数ヶ月以内にウクライナは大敗北することになると思います、と言っていたらそれに近い状況になって来ました。


 両者の話がかみ合わなかったのはゼレンスキー大統領がこだわったウクライナの安全保障ですが、トランプ大統領としてはウクライナが鉱物資源の共同開発に合意すれば多くの米国人技術者がウクライナに駐在することになり、これが何よりの安全保障になるということがゼレンスキー大統領には通じませんでした。

 今後もし再会談が行われることになったらゼレンスキー大統領がまずやることはきちんとスーツとネクタイで会談に臨むことだと思います。幾ら戦時中だと言っても最大の支援国の大統領との会談にあの格好で臨むことはあり得ません。

 ただ、今更トランプ大統領にこんなことを言っても全く聞く耳持たないでしょうが、今から30年前の1994年12月にブタペストで行われた会議で、米国のクリントン大統領はウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンの3国に対して安全保障を約束しました。当時ソ連の核兵器の3割がウクライナ国内にありましたが、ウクライナはこの言葉を信じて核兵器を放棄しました。この状況になって「ウクライナは核放棄すべきではなかった」と考えるウクライナの人々が少なからずいると思います。




■日本維新の会の問題点■

 教育無償化を勝ち取って鼻高々の維新の会ですが、これで予算通過の見返りに万博の巨額赤字の政府補填も期待できる状況になりました。しかしこれに関して評価する声は全く聞こえて来ません。聞こえて来るのは減税を求める人々の怨嗟の声です。教育無償化によってどれぐらいの人が恩恵を被るのか明確な数字が明らかになっていませんが、ほんの一部の人のための僅か6000億円の支出で国民民主党の求める日本人全体の7兆円の減税を先送りさせてしまった責任は重大です。

 そればかりか今回の教育無償化は吉村大阪府知事にとって大歓迎されるべき出来事でした。これまでも大阪府では高校教育無償化を行っていましたが、今回国策になることで大阪府は全く負担する必要が無くなります。公党の代表が自分か知事を務める自治体の利益のために国会を利用したとも見ることが出来る構図です。私利私欲と言われてもしょうがありません。

 そもそも日本維新の会代表の吉村知事は衆議院議員の経験が殆どありません。吉村氏は2014年に衆議院選挙に立候補しましたが選挙区では敗れ、比例近畿ブロックで復活当選しました。それから僅か1年で衆議院議員を辞職して大阪市長選挙に立候補して当選しました。その後大阪府知事に転身しましたが、この経歴を見てもわかるように国会運営に関して全く経験が無いにも関わらず国政政党の代表についてしまいました。

 そんなこともあってか、僅か入党して2ヶ月の前原氏をいきなり共同代表に据えて国会対応を任せてしまいました。前原氏は当選11回の大ベテランですが、人望が無く2023年8月の国民民主党の代表選挙で玉木氏に大敗して離党して「教育無償化を実現する会」を結成し、2024年10月に日本維新の会に入党しました。

 ですから「教育無償化」は前原氏肝いりの政策で、日本維新の会が昔から公約としていたものではありません。ところが国会運営の経験が乏しい吉村氏が前原氏を共同代表に据えたものですから、その後、前原氏が党の代表として多くの記者会見に臨むことが多くなりました。

 そもそもこれまで日本維新の会は色々物議をかもす行動ばかりで何を求めている政党かはっきりしませんでした。国政政党としての理念がはっきりしないので構成する議員も千差万別です。そうした中で維新を除名された国会議員はいったい何人いるのでしょう?丸山穂高、杉田水脈、足立康史、上西小百合、鈴木宗男等々数え切れません。問題発言を繰り返した議員ばかりです。地方議員に至ってはその数は数えきれません。こんな政党は他にはありません。そもそも地域政党の一つに過ぎなかった政党が国政に打って出たものですから人材不足で筋の悪い候補しか集められなくなってしまったためにこのような事態になったのだと思います。

 また、吉村氏はもめごとが続く兵庫県議会で処分を受けた2人の県議について「思いはわかるがルールに違反してはいけない」あるいは「事実を伝えたいという気持ちはわかるけれどもルールに反することはやってはけない」と発言して集中砲火を浴びています。これは彼ら2人と気持ちを同じくしている人間の問題発言です。また、離党勧告された議員も除名された議員も自分の行為を全く反省していません。特に今回除名となった岸口県議については漏洩した事実と異なる文書をN党の立花氏に提供して竹内県議を自死に追いやった原因を作ったので極めて重罪です。維新の会では党の所属として立候補する時には「党を除名された場合には議員辞職する」という誓約書を提出しているはずですが、除名された岸口県議は一向に辞任する気配はありません。維新は恥知らずの議員だらけです。と言っていたら、維新を除名された議員と離党勧告を受けた議員3人が議員辞職するどころか新会派「躍動の会」を立ち上げて「次回の県議選で第一党を目指す」とぶち上げました。とんだ「恥知らず会派」の誕生です。

 また維新の会は夏の参議院選挙の党の公認候補者選考のための予備選挙に応募する候補者に1000万円を準備することを求めています。せこい党ですが、今回のことがあって、維新から立候補したいという人は選抜するほど集まらないと思います。




■徒然思うこと■

・高額療養費の引き上げで自民党参院選惨敗確定かと思ったら別の原因で惨敗確定・

 「自民党参議院選惨敗確定」と書こうとしていたら土壇場で石破総理が引き上げ中止を表明しました。衆議院で予算成立後、舞台を参院に移したと思ったら身内からの攻撃にあって、与党の公明党はもちろん自民党議員からも「このまま行ったら参議院選挙を戦えない」と言われてあっさり引き上げを諦めました。引き上げ断念で評価する声が上がる一方、それはそれで「優柔不断」と非難される有様です。

 とは言え、これで高額療養費の引き上げ問題で国民を敵にすることは無くなったために自民党の参議院選挙での惨敗は無くなったと思いましたが、今度はとんでもないことをやってくれました。杉田水脈元衆議院議員の自民党の参議院選比例代表への擁立です。杉田氏は1564万円の裏金議員であるばかりでなく、過去において在日コリアンやアイヌ民族に対して差別的発言を行い、法務当局から「人権侵犯」と認定された人物で、他にも「同性カップルは子供を作らない、すなわち生産性がない」と発言して世間から批判を浴びました。自分の発言に対する様々な非難に対しても一度もまともに答えたことがありません。天地がひっくり返っても決して議員にしてはいけない人物です。

 石破総理は過去に杉田氏のことを「全く正しいことだとは思わない。これでどれだけ傷ついた人がいるだろうか」と厳しく指摘していました。そして「党の多様性を盾に杉田氏を比例名簿の第1位にしようとした安倍元首相に対し「私はそんな自民党であって欲しいとは思わない」と発言していました。

 これだけのことを言っておいて今回参院選の候補にしたことで評価はガタ落ちです。どんな言い訳も通りません。満面の笑みで杉田氏を公認候補として紹介する石破総理の姿が参議院選挙で自民党のポスターに掲載されることになると思いますが最悪です。

 自民党保守勢力に配慮しての公認だとは思いますが、今後石破総理は参議院選挙までことあるごとに杉田氏を公認したことに関して過去の自分の発言との整合性を問われることになります。これではちょっと参議院選を戦えないんじゃないでしょうか?これで参議院選挙で与党の過半数割れが確定です。

・生成AIを悪用して楽天モバイルの多数回線の契約 中高生3人逮捕・

 これはビックリするニュースですね。中学生だからと言って馬鹿に出来ません。しかも彼らにはコンピューターの専門知識はありませんでしたが、対話型の生成AIに質問を繰り返してウイルスを作成していました。

 これだけでは何のことだかわからない方も多いと思いますが、注目すべきは単なる不正ログインではなくAIの力を使っていることです。彼らは何と3人合わせて32億7500万件のIDとPWを入手し、楽天モバイルに22万件の不正ログインに成功しました。しかも楽天回線を1000件不正契約したと言われています。空恐ろしい気がしますが、私たちはどうしたらこのような犯罪の被害を受けないで済むのか誰も解説していません。これだけ大量のログインを受けた楽天モバイルも何もコメントしていません。

 しかしこの中学生たちのAIの活用と2月27日に政府が閣議決定したAI法案の乖離はとてつもなく大きく、AI法案ではAIを活用した犯罪は殆ど防ぐことは出来ないでしょう。そもそも閣議に出席した閣僚に今回閣議決定した法案でどのようなリスクに対応出来るのか聞いてみたいと思います。そもそもAIとは何かと聞かれて全員が回答できるとは思えません。こんなことはデジタル庁で決めれば十分です。

 しかし現在は大学生の半分がAIのChat GPTを使っているそうですから、私たちもその知識を持っていないと、若者の意見が本当に自分の意見なのかChat GPTの意見なのか判断出来ない時代になって来ました。

・国民民主党を目の敵にする日刊ゲンダイ・

 夕刊フジが廃刊になった後、私の主要な情報源となった日刊ゲンダイですが、ここに来て何故だか国民民主党を揶揄する論調が目立ちます。それに反して維新に対してはあまり批判をしません。先日の兵庫維新の会のN党の立花氏に情報を渡したとする3人の県議の5時間に渡る記者会見についても各メディアが大きく報じているのに日刊ゲンダイだけが報じませんでした。裏で維新と握っているのでしょうか?国民民主党の玉木代表が「メディアに対して国民民主党の悪口を書け」との依頼が出ていると発言しましたが、日刊ゲンダイもその片棒を担いでしまったのかも知れません。

 今国会を経て国民民主党に対する評価が大きく二つに割れています。「筋を通して立派」という評価と「意地を張りすぎて果実無し」という評価です。確かに今国会では「178万円の壁」は作れませんでしたが「178万円を目指す」という「三党合意」は消えたわけではありませんから、高額医療費の引き上げ中止のための予算修正が衆議院で行われればまだ希望は持てます。それよりも理解不能な難解な時限立法の「160万円の壁」を何とか参議院で修正してもらいたいものです。

・とてつもない金額になってきた大卒初任給・

 今春及び来春の大卒初任給の金額がとてつもないことになって来ました。特に金融、不動産、商社等の企業にその動きが顕著です。何しろ初任給30万円以上の企業が目白押しです。

 ちょうど50年前に7万6千円の初任給で野村証券に入社した私と比較しても意味がありませんが、ここ1、2年の初任給の上昇額は桁外れです。多くの企業が来春からの大幅引き上げを表明しているのに対し、大和ハウスがこの4月から大卒初任給35万円とぶちあげました。来月入社の社員にとっては内定の段階では考えもしなかった初任給にビックリしていることと思います。大和ハウスでは初任給に留まらず、全社員を対象に年収ベースで10%を引き上げる計画で世間を驚かしています。

 金融業界でも、明治安田生命が今春から初任給を33万2千円に引き上げる他、生命保険各社が大幅に初任給を引き上げます。来春から大卒初任給を30万円に引き上げる三井住友銀行がお粗末な感じがします。1993年に大卒初任給が19万円台に乗せてから2007年まで19万円台が続きました。2008年に20万円台に乗せてからも低迷が続き、21万円台に乗ったのは2018年になってからです。その後は毎年1万円近く上昇し、2024年には24万円近くなりました。それが僅か2年で軒並み5~6万円のアップです。今春及び来春に入社する社員は入社初年度から年収は500万円近くなります。現在勤務している社員の給与もそれに合わせて大幅にアップすることになりますからウハウハです。

 それにつけても気の毒なのは1995年から2000年にかけての「就職氷河期」に学校を卒業した世代です。2003年の大卒就職率は何と55%でした。この定職にもつけず現在中年を迎えた世代が2000万人もいると言われています。この世代が中心の我が国の世帯平均年収は長期間450万円前後で推移しています。また、この世代は厚生年金の加入もままならない人も多く老後に不安を抱えています。「生まれた時期が悪かった」では済まされない問題だと思います。失われた10年を作り出したのは、過剰流動性の時には何も手を打たなかったのに、バブル崩壊期に株式市場が暴落を続けているのにも拘わらず金利を上げ続けた日銀の責任だと私は考えています。

・ノロウイルス感染拡大・

 3月に入ってからもノロウイルス感染のニュースが次々に飛び込んで来ます。よく感染原因としては給食とか弁当とかが多いと言われますが、最近では米子市内の菓子店で製造・販売された「いちご大福」などを食べた人が食中毒となり、「いちご大福」を食べて症状が出た人が62人、「練り切り」などを食べて症状が出た人が37人にものぼりました。

 今回原因と考えられているのがトイレです。菓子店の従業員が使用していたトイレのレバーからノロウイルスが検出されました。トイレを感染経路としたノロウイルスの感染例は非常に多いようで、私達も外でトイレを使用した時にドアノブや水栓レバー、蛇口などを触った場合には十分な消毒が必要であるという意識を持つ必要があります。

 ノロウイルスを含めた感染性胃腸炎患者が増加しており、その大きな原因が寒暖差による免疫力の低下と言われているので今の時期は特に注意が必要です。コロナの時と同様に除菌スプレーを持ち歩いた方が良さそうです。但しノロウイルスにはアルコール消毒はあまり効果が無く、次亜塩素酸ナトリウムの消毒が有効なようです。まだまだマスクも手放せません。

・東京アプリ・

 東京都がまた妙なことを始めました。「東京アプリ」という東京都公式アプリです。例によって様々なキャンペーンに参加することによってポイントが得られるようになっています。そもそもこの制度の趣旨がはっきりしません。

 キャンペーンと言っても相互扶助とか健康増進に関わるものが殆どで、一所懸命にキャンペーンに参加してポイントを獲得しようと思う人が出て来るとは思えません。看板倒れの税金無駄遣いになること間違いなしです。とても多くの都民がこぞって利用するようなアプリではありませんから慌ててインストールする必要はありません。ただ、東京都のやることですから年末のPayPayキャンペーンのようなとてつもなくお得なインセンティブを付けて来るかも知れません。そうなってから対応しても遅くありません。


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