■トランプ大統領の朝令暮改■

 就任早々大活躍?のトランプ大統領ですが、事前の発言通り不法移民の強制送還を早速実行に移しました。メキシコとカナダに対する25%の関税を課すことも本当に実行に移そうとしましたが、メキシコとカナダが「国境警備を強化する」と言ったので米国側は発動直前にこの措置を30日間停止することにしました。一方不法移民の受け入れを拒否したコロンビアには関税を増税すると脅して不法移民の受け入れを認めさせてしまいました。朝令暮改と言うよりも大統領令をブラフに使っているみたいですね。一方中国に対する10%の追加関税に関しては中国が米国の脅しに屈せず、対抗措置として一部の米国製品への追加関税を発表するとともにWTOに提訴しました。こちらはガチ勝負です。

 尤も直近で大きな朝令暮改となったのは「連邦政府からの補助金凍結」です。1月27日に出されたこの命令に対して全米の22州が猛反対して連邦判事が補助金凍結の一時差し止めを命じたために僅か2日で撤回しました。大統領令に対してどのような影響があるか何も考えずに乱発しているだけで、とても政治とは言えません。

 そして今のところトランプ大統領の施策はどれも国民の経済的負担を増すことばかりです。不法移民の国外退去が米国内の低賃金労働者の減少を招き物価高が予想されています。メキシコとカナダに対する関税にしても物価高を招くことは確実です。今後米国内の物価を始めとした経済指標が発表されるようになるとトランプ大統領を非難する声が巻き上がるかも知れません。

 それにしても上々首尾の日米首脳会談でした。強硬な対日政策の片鱗も見せませんでした。対日貿易赤字も現在では日本は世界で7位と決して多くはなく、主要なテーマとはなりませんでした。その1000億ドル(正確には685億ドル)と言われる対米貿易黒字もトランプ大統領が主張する米国産の液化天然ガスの輸入に関しても下に示したように、現在ロシアから輸入している分を米国産に切り替えればあっという間に対米黒字は雲散霧消してしまいます。

 現在日本が液化天然ガスを輸入している国とその割合

  第1位 オーストラリア 41.6%
  第2位 マレーシア   15.6%
  第3位 ロシア      9.3%
  第4位 米国       8.4%

 また、安部元総理ほどではありませんが、トランプ大統領との人間関係も円満に構築できたようですし文句のつけようがありません。縁の下の力持ちとして頑張った官僚達も褒められるべきだと思います。これでしばらくの間はトランプ大統領が日本に対して無理難題を吹っかけてくる心配は無くなりました。今世論調査を実施したら石破総理の支持率が大幅にアップしていることは間違いありません。

 ただちょっと心配になるのは、あまりに日米関係が蜜月状態になって日本がイスラム諸国の反発を招かないかということです。日米関係は重要ですが、それと同様に日本はASEANの一員であることを忘れてはなりません。トランプ大統領が就任して最初に首脳会談を行ったのはイスラエルのネタニヤフ首相です。その後「ガザを米国が占領する」発言も飛び出しました。世界のイスラム教徒を刺激するような発言ばかりです。イスラム教と言うとすぐ中東各国を思い浮かべますが、ASEANは一大イスラム教圏です。ASEANの人口の半分がイスラム教徒であることを忘れてはなりません。インドネシアは人口の87.2%、約2億人がイスラム教徒です。マレーシアも国民の63%がイスラム教徒です。これらの国は続々と米国と距離を置きつつあります。日本はこれらイスラム教圏の国と米国との橋渡しをしていかなければなりません。

 また最新情報ではUSスチールに対する日本からの投資に関してトランプ大統領と石破総理は「買収ではなく投資」ということで意見の一致をみたということになっていますが、官邸関係者が「株式保有を49%以下でということで合意した事実はない」と言いだしました。一方トランプ大統領は具体的に「誰もUSスチールの株式の過半数を保有することは出来ない」と明言しています。今更日本側も「買収ではなく50%以上の株式を投資によって取得する」とは言い出せないでしょう。ちょっとゴタゴタしそうです。

 ただ日本製鉄にとってUSスチールの子会社化は会社にとって最良の選択かも知れませんがマストではないと思いますので、USスチールの破綻が近くなるまで手を引くという選択肢はあると思います。この場合には、当初のスキームがトランプ大統領に否定されたことで、買収の中止による890億円の違約金を支払う必要はないと思います。




■本当に面白くなってきた国会の攻防■

 国会、特に予算委員会の攻防が本当に面白くなって来ました。予算委員会は委員長が立憲民主党の安住氏であるばかりでなく、予算委員会の過半数を野党議員が占めています。その結果、自民党が反対していた安部派会計責任者の参考人招致が賛成多数で可決されました。

 自民党幹部が「数の力による議事運営は厳に慎んで頂きたい」と昨年9月までの野党側のコメントと全く同じ発言をして、予算委員会で立憲民主党の長妻氏から「どの口が言うのか」と揶揄されて一言も返せないで終わりました。

 もう一つ興味深い動きは今回の参考人招致でも与党でありながら議決で退席した公明党から「自民党には自浄能力を発揮して全容解明に努力してい頂きたい」と発言されたことです。これまで自民党と歩みを共にしていた公明党が様々な局面で自民党に対して是々非々の体制で臨むようになって来ました。沈みゆく泥船から逃げ出そうという動きが始まっている感じです。

 また、この参考人招致に関しては2月5日に国会で動きがありました。参議院の政治倫理審査会で安部派の野上元農水大臣が「安部派内での政治資金の取り決めは会長と事務局長で取り決めをしていた」と発言しました。この事務局長とは今回参考人招致された安部派の会計責任者です。この発言で野党が一挙に活気づくことが予想されます。会計責任者には参考人としての出席は拒否されましたが、今後は証人喚問できるかどうかがポイントです。

 予算に関しても予算案に関して省庁別審査で野党の厳しい追及が続いていて、回答に屈する官僚続出です。「防衛装備品の輸出に関する基金」はこれまで800億円が積まれていますが、来年度政府は更に400億円の積み増しを計上しています。これまでに使い途が決まっているのは僅か15億円、これでは野党を納得させられるわけがありません。これまでにない政府予算の組み換えが行われることになるでしょう。ただ野党も図に乗って15年前の民主党政権の事業仕分けにおける「2位じゃダメなんですか?」みたいな発言はしないでもらいたいと思います。後々まで笑いものになります。

 一方宙ぶらりんになっていた「103万円の壁」にも動きが出て来ました。自公両党が先に閣議決定された123万円から140万円台後半での一致を見ようとしています。玉木氏も「150万円プラスアルファ」と言い出しました。決着間近です。まだガソリンのトリガー条項の解除等の問題は残っていますが、全て国民にとってプラスな動きばかりですので安心してみていられます。

 一方、ここに来て維新が妙な動きをしています。前原共同代表と石破総理が会食したりして接点が多くなっています。それもそのはず維新と言うより吉村共同代表が率いる大阪万博の先行きが怪しくなって来ました。チケットの売れ行きも捗々しくないどころか、幾つかの海外パビリオンの建設が開会日に間に合いそうもありません。ここに来て慌てて政府に対して当日券の発売を認めてもらおうという動きも出て来ました。今後も開会までは維新は政府に頭が上がりそうもありません。

 個人的には維新が国民民主党を差し置いて自民と手を繋いで予算に賛成するようなことがあったら大阪万博に行くのは取りやめます。おそらく今年の参議院選挙で維新は惨敗することになるでしょう。また維新の主張する「所得制限なしの教育無償化」には賛成出来ません。年収が1億円もある家庭に対しても教育無償化を主張する意味がわかりません。教育無償化は年収2000万円以下ぐらいの家庭で十分だと思います。しかし今のところ、自民は公立高校の所得制限なしの教育無償化を決めてしまいました。維新は更に私立高校の教育無償化を求めていますが、これを自民が飲めば予算成立は間違いないと思います。

・石破総理の善行・

 初めてのと言うか、またしてもと言うか石破総理がやってくれました。学校法人森友学園への国有地売却に関する財務省の公文書改ざんを巡り、関連文書を不開示とした国の対応を「違法」と認めた大阪高裁の判決について総理の判断で国が上告しないことを決めました。これで自死した近畿財務局職員の妻の情報公開請求が認められることになります。財務省の調査報告書で「改ざんの方向性を決定づけた」とされはしましたが何の責任も問われなかった佐川元理財局長の罪が暴かれる可能性が高くなって来ました。森友問題は単なる刑事事件ではなく安部元総理夫婦案件であったための財務省の忖度が問題になりましたが、これが今後明らかになって来るはずです。これがもし安倍政権がまだ続いていたり、岸田政権が続いていたら国は上告したと思います。些細なことではありますが、石破総理になって少しずつ世の中がまっとうな世界に近づいていると思います。実は石破総理はこれまで自死した近畿財務局職員の未亡人と2度ほど接触していたそうで、これまで知らなかった石破総理の人間性に触れたような気がします。




■徒然思うこと■

・フジテレビ問題・

 大ひんしゅくを買った最初の記者会見と言い、1年半も前に当該事例を認識していたのにコンプライアンス部に全く連絡していなかったというのはフジテレビのガバナンス欠如以外の何物でもありません。

 しかしフジテレビの27日の10時間記者会見の直前に文春が特定の読者に対して「X子さんと中居氏の会食を企画したのはフジテレビのA氏としていた報道を取り消しました」これは完全なルール違反です。10時間の記者会見の相当部分がA氏の仲立ちに関する質疑でした。会見前にこれが公にされていたらあんな長時間の記者会見にならなかったはずですし、質問者のフジテレビを責めるトーンも下がったはずです。文春のこの件は単なる謝罪文一つで片付く問題ではありません。

 しかし現時点においても日枝氏の首に鈴をつけられないフジテレビの体制にこのような事態を招いた企業風土の根深さが読み取れます。日枝氏に「鯛は頭から腐る」と言える人はいないのでしょうか?

・初めての外科手術・

 生まれて初めての手術入院です。1月14日に腰椎の手術を受けました。2週間近い入院と今後数か月のコルセット生活となります。術後の禁忌事項が5つあって、「重いものを持ってはいけない」「前屈してはいけない」「腰を反ってはいけない」「身体をひねってはいけない」「30分以上同じ姿勢をとってはいけない」と面倒くさい生活を強いられています。

 入院してみて一番印象深かったのは病院食の不味さです。そもそもご飯とお味噌汁以外の料理は全て温かくありません。追加料金も支払ったのですが食べられたものではありませんでした。結局術後3日目以降の病院食は全てお断りして、コンビニ食と差し入れで済ませました。入院中だからこそ普段より美味しい食事を提供して欲しいものです。私は歩き回れてなおかつ消化器系の入院患者ではなかったので、せめてブッフェ方式の食事でも提供してもらえればと思います。

 そろそろ術後1か月が経ちますが、まだまだ普通の生活には戻れません。ウォーキングは出来るので毎日5000歩以上歩いていますが、じっと座っていられるのは30分が限度で、とても通常業務には戻れそうもありません。床屋にも行けなければ映画も見に行けません。じっと骨の癒合を待つ日々です。

 この後もコルセットを付けた生活が続きますが、主治医は「3ヶ月」と言うのですが、執刀医の若手のドクターが「6ヶ月コルセットを付けて欲しい」と言うので診察の度に言い争いになっています。もし6ヶ月もコルセットを付け続けたら夏までコルセット生活になって汗疹だらけになってしまいます。しかも平均余命でいけばあと12年しかないのに、そのうち半年もコルセット生活は勘弁です。

 しかし笑い話ではありませんが、痛くて前屈みになって床のごみを拾えないものですから自宅の床がゴミだらけです。それでも各部屋にマジックハンドを購入して掴めるごみは捨てていますが、紙1枚のようなゴミが本当に困ってしまいます。スラックスのポケットから落ちた小銭が床に散らばっています。それでも一つだけ秀逸な用具を見つけました。写真のような用具で前屈みにならなくても器具に靴下を通して紐を引っ張り上げるとスムーズに靴下が履けるという用具です。色々な物を考える人がいるものです。

・ボロボロ続出の新春ドラマ・

 今年の新春ドラマの視聴率が悲惨なことになっています。かろうじて10%を超えているのは「御上先生」と「相棒」だけです。

 しかしよくもこんなつまらないドラマばかり作ったものです。本当に視聴者がこんなドラマを求めていると思っているのでしょうか?NHKも大河ドラマはボロボロですし、朝ドラも過去最低の視聴率となりそうです。やはり緊迫感の無いドラマはだめですね。

 評価が分かれるのがバカリズムの「ホットスポット」です。隣のおじさんが宇宙人という阿保らしい設定に私はついていけませんが、「面白い」と見ている人が意外に多いことに驚かされます。

 しかし「御上先生」は秀逸です。回を追うごとに深みが増して来ます。最初は端役かと思っていた吉岡里穂の是枝先生の存在感がどんどん増して来ました。先が読めずに期待大です。個人的には「東京サラダボウル」は欠かさず見ています。奈緒の新しい魅力が売り物です。

・日産自動車またも経営破綻?・

 1999年に経営破綻寸前でフランスのルノーの支援を受けて存続できた日産自動車が再び経営危機に陥っています。12月にホンダとの経営統合を打ち出してどうにかなるかと思いましたが、いつになっても再建プログラムが出来上がらない日産にホンダが業を煮やして子会社化をぶち上げたら日産の取締役会の猛反対にあって経営統合話が消えてしまいました。本当に救いようのない日産自動車の体質です。元々昭和40年代から「技術の日産」と言われていましたが長期政権の経営者と組合のドンとの癒着、そして国立銀行のようなスタンスのメインバンク興銀と「改革」とは全く無縁の経営が長期に続き1999年の破綻騒ぎとなりました。

 今期も米国で大赤字を出し、来期の社債償還もままならない状態になってホンダとの経営統合の話を持ち出して来ましたが、日産のあまりの改革の遅さにホンダが呆れて子会社化を打診すると官僚体質の自己保身に走る役員たちによって統合話も蹴っ飛ばしてしまいました。もう国内で日産と組む会社はありません。そうなると日産買収に意欲を示している台湾の鴻海が唯一の候補となりますが、日産首脳陣には鴻海に対する拒否感があります。それは数年前に社長候補と言われた副COOの関潤氏を追い出した経緯があるからです。関氏はその後日本電産(現ニデック)に転じましたが創業者の永森氏に評価されずに現在鴻海のEV部門を率いています。もし日産が鴻海傘下となったら関氏が経営トップとなり、過去に自分を追い出した役員を一掃するでしょう。その時になって現経営陣はホンダの子会社となっていた方が良かったと思うに違いありません。

・クレジットカードサイン終了・

 2025年3月末でクレジットカードの本人確認として手書きのサインが廃止されます。しかし、珍妙なことに最近届いたクレジットカードについて送り状に「カードを受領したら直ちに裏面に署名をお願いします」と書いてあります。裏面に署名が無いと当該クレジットカードは使用が出来ないと書いてあります。使用にあたってサインが必要ないのにカード裏面には署名が必要な意味が全く理解出来ません。

 そもそもこれまでもカードの裏面に何故署名が必要だったのでしょう?私はもしカードを落とした時に拾った人が日本人だったら似たようなサインをすることが出来るので不正使用のリスクが高いと思っていました。ですからサイン廃止は大歓迎ですが、カード裏面の署名欄には全く納得出来ません。また全員が暗証番号で決済となった時に大混乱が起きるのではないかと心配です。その暗証番号にしても覗こうと思えば覗けますのでセキュリティの面でも心配です。

 4月1日からはこれまでのようにテーブルでサインすることが出来なくなりますので、店舗が決済端末をテーブルに持参して決済することになります。 なお、今後も少額決済においてはタッチ決済が出来ます。


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