■マイナ保険証大騒動■

 本当は政治の話からお話ししたかったのですが、12月2日から始まったマイナ保険証に関する問題があまりに多いので真っ先にお話しすることにしました。

 12月2日からマイナ保険証に移行しました。現行の健康保険証は今後は新規に発行されなくなりますが、有効期限までは使用可能です。マイナンバーカードを持っていない人とマイナンバーカードに保険証を紐付けしていない人に対しては現行の保険証の期限が切れるまでに「健康保険資格確認書」(いわゆる資格確認書)が発行されます。

 現在マイナ保険証に関して発生している問題は3つあります。

1.一部の医療機関がまだマイナ保険証に対応していない

2.サーバーがダウンしてマイナ保険証が使えないことが散見される

1、2のような場合には先日送られてきた「資格情報のお知らせ」を提示すれば受信出来る。但し「資格情報のお知らせ」だけでは受診出来ない。

3.『「資格確認書」が送られてこない』という問い合わせが殺到している

これは現在使っている保険証の有効期限までに送られて来るので大丈夫です。但し協会けんぽの『「資格情報のお知らせ」を切り取らずに処分してしまった』という方は「資格情報のお知らせ交付申請書」を加入の協会けんぽ支部に提出して再発行してもらわなければなりません。

 11月になってマイナ保険証の不備が続々と明らかになり、これまでの保険証や「資格確認書」の方が使い勝手が良いと言うことが世の中に認知され様々な反応が起きました。

 まずマイナンバーカードと保険証を紐づけしたマイナ保険証の利用登録の解除が殺到したそうですが、これは保険者に「利用登録の解除」を請求しなければならず、解除されるのに1ヶ月近くかかると言うことでどれだけの方が解除できたかはわかりません。12月2日になって慌てて紐付け解除を申し立てた方もいたようですが無理でした。

 今後マイナ保険証を持っていない方に送られる「資格確認書」は有効期間が5年で、5年後には更新されるそうです。5年間も有効期限があるとわかっていたら私もマイナ保険証にせずにマイナンバーカードと「資格確認書」に2枚持ちにしておけば良かったと後悔しているところです。

 将来「資格確認書」を持っている人がマイナンバーカードをマイナ保険証に変更した時に「資格確認書」の効力が無くなるかどうかは現時点でははっきりしません。出来れば2枚持ちしたいところです。

 今後マイナ保険証しか持っていない人の現行の保険証の有効期限が切れた時の問題点は、
1.もしマイナンバーカードを紛失した場合には再発行されるまでの1~2ヶ月の間は医療機関を受診出来ない
2.老人ホームでは多くの高齢者から保険証を預かっているが、もしマイナ保険証になったらリスクが大き過ぎて預かれなくなって不都合が生じる

 この1に対する対策として12月2日からマイナンバーカードについて「特急発行制度」が設けられました。これは通常1~2か月かかる再発行を約1週間で再発行してもらえる制度です。通常再発行手数料が1000円なのに対して2000円かかりますが大した問題ではありません。ぜひ覚えておいて頂きたい制度です。羽鳥慎一モーニングショーを見た人しか知らないとっておきの情報です。

 「資格確認書」があればそれだけで全国どこの医療機関でも受診出来ます。これを知っていたら私みたいにマイナポイント目当てに保険証との紐付けなどしないで「資格確認書」を受け取って5年間はそれだけで受診を済ませていれば良かったですね。きちんと情報提供しなくて申し訳ありませんでした。しかしこんな話はどこにも書いてありませんし、何のお知らせもありません。毎日の情報番組を見あさっている私でもなかなか知り得ない情報でした。あまりに不親切というか厚労省とデジタル庁の怠慢です。

 また「資格確認書」は現行の保険証の期限が切れるまでに送って来るので心配はありませんが、現行の保険証の期限がいつなのか気になる方も多いと思います。国民健康保険や後期高齢者医療保険の場合には来年の7月か8月が期限だと思いますが、サラリーマンが加入する社会保険には有効期限の記載がありません。おそらく来年の12月1日だと思います。

 ということで今後現行の保険証の有効期限が切れるまでは現行の保険証を使い続ければ良いと思います。厚労省やデジタル庁の言う「医療情報の一元化」などはまだまだ実用化されませんのでマイナ保険証を使う受診者のメリットはありません。

 10月末現在でマイナンバーカードの保有者は9449万人、まだマイナンバーカードを持っていない人は2930万人、マイナンバーカード保有者の内マイナ保険証を登録していない人が1702万人です。計算するとマイナ保険証を持っていない日本国民は4632万人ということになります。この4632万人には現行保険証の期限が切れるまでに「資格確認書」が送られます。その有効期限は5年間です。この「資格確認書」が送られて来た人はマイナ保険証の効果がはっきりするまでずっと持ち続けることをお薦めします。


 また、マイナンバーカードの有効期限の問題があります。マイナンバーカード制度が出来て来年で5年ですが、なんともわかりにくいことに、マイナンバーカードの有効期限は10年ですが、マイナンバーカードの中に入っているICチップ、すなわち電子証明書の有効期限は5年です。マイナンバーカードが開始されたのは平成28年ですから既に1回は電子証明書の更新をされていると思いますが、次回の電子証明書の更新時にこれを更新しないと紐付けしているマイナ保険証も期限切れとなります。さあ大変だと思っていたら電子証明書の有効期限が切れたら自動的に「資格確認書」が送られてくるそうです。と言うことは、故意に電子証明書を更新しなかったら今回取り損なった「資格確認書」が手に入ることになります。「やったー」ですね。これも羽鳥慎一モーニングショーの情報です。

 また何故だかわかりませんが、今年の12月2日から来年7月末までに75歳の誕生日を迎える人には東京都はマイナ保険証の有無にかかわらず「資格確認書」を送付するそうです。今後自治体によっては70歳以上の人に対しては例外的に「資格確認書」が送られて来るかも知れません。送られて来たら「ラッキー」です。これも羽鳥慎一モーニングの情報です。

 11月27日と12月4日に放映された羽鳥慎一モーニングショーのマイナ保険証に関する特集は本当にためになりました。他のニュースショーの追随を許さない内容でした。

 それに比べて「めざまし8」の内容の無さにはガッカリです。8時に始まって20分以上天達予報士の天気の解説です。朝の忙しい時間に「時間の無駄」以外の何ものでもありません。結局放映するコンテンツが無いということだと思います。




■本来の国会■

 やっと国会が本来の姿を見せ始めています。至るところで石破総理の謙虚な姿勢が目立ちます。久しぶりの少数与党ということで野党の協力無しには議案が通りませんからこうなることは当たり前ですが、もし高市氏が総理になっていたら野党にここまで謙虚な姿勢をとっていたかはなはだ疑問です。30年ぶりに予算委員会の委員長に野党議員が就任しました。予算員会で質問させると最もうるさい安住淳議員が委員長になるとは皮肉です。

・壁と崖だらけ・

 今回の国会の論戦の大きなテーマは「103万円の壁」です。「103万円の壁」という言葉を聞かない日はありません。他にも「壁」は幾つもありますが、国会で辻元清美議員が「130万円の崖」と言い出したので「壁と崖はどう違うのか?」という議論まで始まって混乱は増すばかりです。

 もう一度幾つかの壁の説明をしてみましょう。103万円は所得税がかかるボーダーラインです。パートやアルバイトの場合には基礎控除48万円と給与所得控除55万円を合計した103万円の年収までは所得税がかかりませんので扶養者となれます。これが給与以外の場合には収入が48万円を超えるといきなり所得税がかかります。例えば学生がウーバーイーツの配達員をやった場合には、ウーバーイーツの配達員は給与所得者ではなく個人事業主となりますから、受け取る収入は事業所得となり48万円を超える収入は課税されます。もちろん事業所得については仕事に使うスマホ代や自転車、バイク等の経費は必要経費となり収入から差し引かれますが48万円を超えたらいきなり税金が発生します。

 尤も「103万円の壁」を超えても本人の所得税はたいしたことはありません。問題は子供の収入が103万円を超えると親の所得で、具体的には学生アルバイトの給与収入が103万円を超えることによって親の扶養家族から外れること(「特定扶養控除」と言われる63万円の所得控除が受けられなくなる)を嫌って「働き控え」をすることが問題と言われています。

 また、これは誰にでも当てはまることではありませんが、未だに大企業においては「家族手当」というものが支給されています。この家族手当の支給要件として多くの企業では「扶養家族であること」を定めていますので、子供が扶養家族から外れると扶養控除が無くなるばかりでなく家族手当も失うことになり二重の損となるために何とか避けようとする動きがあると思います。

 次に「106万円の壁」については後述するとして、立憲民主党が強く主張している「130万円の壁」ですが、現行では年収が130万円を超えると誰もが勤務先の社会保険に入るか国民年金と国民健康保険に加入しなければなりません。しかもこの「130万円」には交通費や賞与も含まれますから注意が必要です。尤もこの基準額に交通費を含めるというのは珍妙だと思います。

 また扶養控除の対象となっていないパートやアルバイトの従業員は収入が103万円を超えても超えた分に対してだけ所得税を支払えば済みますが、社会保険の場合にはこの壁を超えたとたんに収入全体に社会保険料がかかります。社会保険料の料率は概ね30%ですから最低でも15万円の自己負担が生じます。社会保険料は事業主と折半で負担しますので事業主も大変です。特に「130万円の壁」は事業主にとっても非常に大きな問題です。事業主としては「働き控えは困るけど130万円を超えて働かれるのも困る」ということになります。ですから立憲民主党の要求する「130万円の壁」が崩れれば働く人も事業者もウィンウィンとなります。

 「103万円の壁」の議論で許せないのは全国の知事です。地方交付税交付金を受けていない不交付団体(東京都)以外の地方公共団体は、地方税収の減少分については地方交付税交付金によって75%が補填されることになっています。それなのに「教育費の無償が出来なくなる」とか「介護サービスが低下する」とか地方税収減収分の4兆円が全部自分たちの自治体の減収になると騒ぎ立てています。これをまたアホなマスコミが大きく報道していますが、全国知事会がテレビの前で大騒ぎしているのは国に「地方の減収分はちゃんと補填して下さいよ」と言いたいのに、あたかも国民民主党の主張が地方の地域サービスを低下させるかのごとく吠えまくっているのは許せません。吠える権利があるのは東京都のような不交付団体だけです。

 また、「103万円の壁」を178万円に引き上げることによって国と地方で7~8兆円の税の減収が生じると政府と地方公共団体は言っていますが、7~8兆円の減収と言うことは7~8兆円の減税が行われると言うことで、これによる手取額増加の経済効果を全く無視していますし、そもそも7、8兆円も税金を取り過ぎだったとも言えます。

 もともと我が国の48万円の基礎控除が低すぎるのです。「基礎控除」とは「人が社会で生活する上で必ず必要となる最低限の金額」ですが、2019年にこの金額が38万円から48万円に引き上げられました。この38万円がいつから始まったのかなかなかわかりません。昭和50年には基礎控除は38万円でしたから50年近く基礎控除が引き上げられなかったことは間違いありません。諸外国では、英国は234万円、米国は200万円と桁違いです。これらの国では200万円の収入があっても税金はかからないということです。「103万円の壁」で揉みあっているいる我が国の賃金がいかに低いかの証明です。今どき48万円で生きていくことが出来るわけがないのにこれを引き上げろとの声が出ないのが不思議です。最低でも月額10万円、年額120万円ぐらいにすべきではないでしょうか。現行の低い金額で揉みあっているのは情けない話です。

 ところで先月のメッセージでも書きましたが、厚労省が誰も頼みもしない「106万円の壁」の撤廃に動き始めました。従業員51人以上、月額給与8万8千円以上というこれまでの加入義務要件を撤廃し、週20時間以上勤務する人全員を厚生年金加入させる案が社会保障審議会の部会で了承されました。2026年秋の実現に向けてまっしぐらです。これによる事業主負担を国が補助する案も出ています。そうなると年金保険料の一部を国が負担するという訳のわからない構造になってしまいます。年金保険料を納める人を増やすためになりふり構わない動きです。そもそも我が国の年金の仕組みは「積立方式」ではなく「賦課方式」です。「積立方式」とは将来自分が受け取る年金の財源を現役時代に積み立てておく方式で、一方「賦課方式」は年金支給の財源をその時々の保険料収入に求める方式です。ですから現役世代が支払っている年金保険料は将来の自分たちのために充てられるのではなく、現在年金を受け取っているお年寄りに支払う資金として充てられます。自分達が幾ら沢山保険料を払ってもそれに対応した年金がもらえるとは限りません。要するに我が国の年金財政は確実に破綻の途をたどっているので何が何でも徴収する保険料を増やそうという構図です。




■徒然思うこと■

・またも追い込まれた斎藤兵庫県知事・

 大騒ぎとなっている兵庫県知事選ですが、神戸学院大の上脇教授と郷原弁護士が斎藤知事を刑事告発したことによってフェーズが替わって来ました。これまでは警察および選挙管理委員会が公職選挙法違反で摘発するかどうかを多くの人が見守っていましたが刑事告発されて受理されたら刑事事件として捜査が始まります。

 捜査が始まれば結論は案外早く出るのではないかと思います。斎藤知事側はPR会社の社長に依頼していたのはポスターの制作だとして71万5千円を支払ったがそれ以外にPR会社の社長が行ったことはボランティアだったので問題ないと主張しています。しかしPR会社の社長がボランティアとして選挙運動に従事していたからと言って問題にならないわけではありません。PR会社の社長は「会社で選挙運動全体を請け負った」とHPで明らかにしています。これが事実とすればこれだけでPR会社の社長に買収罪が適用されます。この件が発覚以後全く表に顔を見せなくなったPR会社の社長ですが、警察の捜査が入ったら全てを明らかにしなければなりません。PR会社の社長が買収罪に問われたら候補者も連座制が適用されます。事態が明らかになった後は斎藤知事は「公職選挙法に違反することはしていない」「詳細は代理人弁護士に任せている」との発言一辺倒ですがこのままでは済みそうもありません。

・三菱UFJ銀行行員の貸金庫窃盗事件・

 とてつもない金融事故の発生です。練馬支店と玉川支店に勤務した三菱UFJ銀行の行員が顧客の貸金庫から十数億円を詐取しました。「盗んだ」と言わないのは未だにこの事件が立件されていないからです。本来ならば発覚した時点であっという間に逮捕されて氏名も公表されるはずですが、事件の全貌が明らかになる前に警察に逮捕されてしまうと銀行が犯罪の内容を把握出来ないために顧客に対して未だに被害届も出させないようにしているようです。しかし、そうしている間に元行員が自殺でもしてしまったらどうする気でしょうか?

 今回の事件では世にも珍しいことに被害額を勝手に申し立てることが可能な事件です。現時点で被害額は十数億円と言われていますが、これは多分自主申告額だと思います。本人以外は貸金庫の中身は誰にもわかりません。「もしもの時のために現金を1千万入れておいた」と言われれば銀行は全額補償しなければなりません。

 しかし貸金庫が信用できないとなったら私達はどこに貴重品を保管しておけばよいのでしょう?それにしても、銀行員が貸金庫の中身を盗ったり、野村證券の社員が顧客から金銭を強奪して家に火をつける等々金融マンが信用出来ない時代になりました。

・歯磨きのプロセス・

 最近とても興味深い記事を読みました。歯磨きをする時に歯磨き粉をつける前に歯ブラシを水に濡らすかどうかについてです。7割以上の人が「先に歯ブラシを水に濡らす」と回答していましたが正解は「歯磨き粉を歯ブラシにつけて磨く」でした。歯ブラシを先に濡らすとよく泡立ちますが、歯の汚れは泡で落ちるわけではなく歯ブラシで物理的にこすり落とさなければ落ちません。また、歯ブラシを先に水につけると歯磨き粉の口腔内での濃度が薄れてしまい歯磨き粉の薬効効果が薄れてしまうそうです。70年近く間違った方法で歯磨きをしてきたかと思うと愕然とします。

・映画に感動・

 ドクターXを見てきました。迫力シーンの連続で感動しました。ファイナルと言いながらもまた制作されるのでは思っていましたが、西田敏行さんが亡くなってしまったので本当にファイナルになってしまいました。とても残念です。


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