

■自民党惨敗■
予想を上回る自民党の惨敗でしたが、私からすれば最も望ましい選挙結果でした。これで自公が何でもかんでも好き放題に自分たちの政策を通すことは出来なくなります。野党が結集すればいつでも内閣不信任決議案を提出して可決することが出来ます。この15年間、特に第二次安倍政権が発足してからの12年間は自公のやりたい放題で、野党の提出する内閣不信任決議案は出す前から否決されることがわかっているセレモニーに過ぎませんでした。
しかしこれからは違います。自公は野党のどこかと組まなければ法案を成立させることは出来ません。やっと本来の民主政治らしくなって来ました。
・自民党惨敗の原因・
原因は幾つもあると思います。もちろん裏金事件が最も大きかったとは思いますが、そもそも自民党の政治と経済に対する不満が募っていたことが挙げられます。また裏金事件に対する党の姿勢も有権者の怒りの火に油を注ぐ結果となりました。立件されなかった裏金3000万円以下の議員に対する処分も甘々でした。5年間で2728万円の不記載があった萩生田氏は党の非公認となりましたが、当選したら自民党会派への加入が認められました。悪いことをしたから非公認なのに、当選したら無罪放免という感じです。選挙後も更に支持率を下げるような自民党の振る舞いです。
・2000万円問題・
投票日数日前に赤旗新聞が自民党の非公認候補が支部長を務める支部に公認候補の支部と同額の2000万円が党から振り込まれたと報じました。これが大問題となり、おそらく10~20人の自民党候補が落選に追い込まれたと思います。多くの自民党候補が「2000万円の件が報じられて急速に雰囲気が変わった」と言っています。自民党惨敗の最大の功労者は赤旗新聞かも知れません。
石破総理が一生懸命「これは選挙費用ではありません」と説明していましたが、公示日の直後に公認候補と同額の2000万円が党から振り込まれたら選挙資金と思われてもしょうがありません。しかも公認候補の支部に支給された2000万円には公認料500万円が含まれています。非公認候補の支部に公認料を除いた1500万円しか振り込まれなかったら言い訳も出来たでしょうが公認料を含んだ額を振り込んでしまっては致命的です。しかもこの振り込みは森山幹事長が行ったもので石破総理は時期も金額も知らずにOKを出してしまったようですね。と言って森山幹事長を更迭することも出来ない弱体内閣です。
・統一教会の支援無し・
あまり報道はされなかったですが、今回の選挙では自民党候補が統一教会の支援を全く受けられなかったことも大きな敗因の一つです。これまでは票集めだけではなく、統一教会の会員が選挙事務所に詰めたり電話を掛けまくって自民党候補を支援していましたが、今回の選挙ではそれが全くありませんでした。これでどれぐらい票が減ったのかはわかりませんが何人かの当落に影響したことは間違いないと思います。
・戦後3番目の低投票率・
投票率が上がって浮動票が増えると共産党以外の野党に票が行って自民党が不利になり、投票率が下がると支持基盤が強固な自民党と公明党と共産党に有利と言われていました。しかし今回の選挙では浮動票、特に若い人達の票が新興政党にいってしまいました。若い人達に嫌われたのが自民党でした。それに岩盤だった自民支持層の票もとりまとめられなかった自民党の惨敗です。
しかし惨敗したのは自民党だけではありません。それは比例代表での各党の得票数を見れば明らかです。立憲民主党は勝利したとは言え比例代表の得票数は前回の1149万票から僅か7万票しか増えていません。公明党は711万票から596万票、日本維新の会は805万票から510万票、共産党は416万票から336万票に票を減らしています。割合で言うと日本維新の会が最も票を減らして前回選挙から36%も票を減らす惨敗でした。もちろん戦後3番目の低投票率ですから各党の票数が減っているのは理解できますが、自民党と公明党と共産党は組織票も失ってしまいました。今回の投票率と投票数を見ると、投票した人の中身がこれまでと大幅に変わって来たのかも知れません。比例で大きく票を伸ばしたのは国民民主党とれいわ新撰組だけです。
公明党と共産党が低投票率の中で議席を減らしたことについては色々検討が必要です。公明党については自民党と与党を組んだことで自民党に対する世間の批判に付き合わされたのかも知れません。しかし共産党の低投票率の中での議席減は説明がつきません。もしかしたら両党も鉄板の支持者が高齢化するとともに両党が宗教と共産主義をバックにしていると言うことで日本では若年層を引きつけるのは難しいのかも知れません。その推測が当たっているとしたら今後の選挙でも盛り返すことは期待出来ません。支持者の高齢化の問題は自民党にも同じことが言えると思います。

しかし野党共闘が全く機能しなかったのによく立憲民主党は票を伸ばしたと思います。野田代表が本当に政権を取りに行く気だったら野党共闘を行うべきでした。もし野党共闘が実現していたら自民党は更に大きく議席を減らしていたと思います。
共産党は前回の総選挙では立憲民主党と国民民主党との共闘による野党候補の一本化により全289選挙区に対し候補者を絞り105人を擁立しました。しかし今回の選挙では野党共闘が実現しなかったために213人もの候補者を立てて143人が法定得票率に達せず4億2900万円の供託金を没収されました。共産党も今後は政策を見直し他党との連携を考えていかないと先細りだと思います。
少数与党に落ち込んだ自民党は、考え方が共有出来る国民民主党の協力を得て国会運営を行おうと考えています。キャスティングボートを握った国民民主党は今回の選挙で議席4倍増を果たしました。とは言え総数では28議席でしかありません。自民党と国民民主党にとって本当に都合がいいことに、自公と国民民主党の議席数を合計すると過半数を維持出来るのです。国民民主党は「や党」と「よ党」の間の「ゆ党」としてうまく立ち回れば漁夫の利を得ることが出来ます。
国民民主党にとって都合の良いことに今は11月で、これから急げば来年度予算や令和7年度税制改正に自分たちの政策を取り込めることが可能となります。これがもし総選挙が年明けだったら幾ら要求を受け入れてもらっても現実のものとなるのは再来年になってしまいます。来年になったら内閣不信任決議案が採択されてもしかしたら解散総選挙が行われるかも知れません。玉木代表は何とか年内に所得税の非課税枠の引き上げとガソリン税のトリガー条項の発動と政策活動費の廃止ぐらいまで実現したいと目論んでいると思います。消費税5%という政策も挙げていますが、これは絶対実現しないと思います。ただ国民民主党としては第一の公約である「非課税枠の拡大」関しては徹底的に拘って自民党と交渉しないと今後若者の支持を得続けられないかもしません。
しかし国民民主党の公約で何が驚いたかと言うと所得税の非課税枠の178万円への引き上げの178万円という数字が何と1995年から引き上げられていない103万円の基礎控除に1.73倍を掛けたものなんですが、この1.73と言う数字はこの29年間で上昇した最低賃金の倍率なんですね。最低賃金が1.73倍になるのに30年近く掛かったと言うことが驚きです。改めて日本のデフレ時代を実感します。
しかし新興政党の得票には驚かされました。選挙前にれいわ新撰組が共産党を上回るなんて誰が予想したでしょうか?保守党や参政党も大量の票を獲得しました。何だか少数野党が群雄割拠状態ですが、この状態がこのまま続くとも思えません。
・厚労省の策謀・
ところで厚労省がこのどさくさに紛れてとんでもないことを言い出しました。何と従業員51人以上、労働時間週20時間以上年収106万円以上の人に厚生年金への加入義務を設けると言い出しました。従前から言われていた年金財政の破綻を遅らせるために1人でも多く年金保険料負担者を増やそうという策略です。元々サラリーマンの控除対象配偶者は3号被保険者として年金保険料の負担無く将来の基礎年金の給付が約束されています。
年収106万円での年金保険料の負担額は約10万円にもなります。健康保険料も払わなくてはなりません。立憲民主党の野田代表の「106万円の壁よりも130万円の壁の方が重要ではないか」という発言の尻馬に乗っての発言だと思いますが、厚生年金保険料の発生は事業主の負担も同時に増えることになり絶対認めるわけにはいけません。11日からの国会論議でこれだけは議論の俎上に載せてもいけません。
・早くもビビっている自民党参院選候補・
来年の参院選に立候補を予定している裏金自民党議員が「政治倫理審査会に出席する」と言い出したそうです。キックバックされたお金を政治資金報告書に記載しなかった裏金議員で政治倫理審査会に出席しなかった議員が29人います。衆議院選挙の候補との整合性を保つにはこれらの議員は非公認となるはずです。今回の衆議院選挙で裏金議員が党の公認を得られなかったのに対し、政治倫理審査会に出席して「知らぬ存ぜぬ」と、とぼけまくった松野博一元官房長官や武田良太元総務会長が公認されたのを見て慌てて今から政治倫理審査会に出席すると言い出したみたいです。国会からの2回の出席要請を無視しておいて今頃になって「出席する」と言い出すのは本当にみっともないと思いますが背に腹はかえられないと言うことだと思います。しかしもし今から政治倫理審査会に出席するとなったら松野元官房長官のように「知らぬ存ぜぬ」では済みません。どういう経緯で受け取って、どのようにそのお金を使ったか明らかにしてもらわなければ政治倫理審査会に出席する意味がありません。裏金議員にとっては出るも地獄、出ないも地獄です。
しかし日曜日のNHKの「日曜討論」を見るのが楽しみになりました。久々に政党間でまっとうな議論が行われるようになりました。
と言っていたらとてつもないニュースが飛び込んで来ました。国民民主党の玉木代表の不倫問題です。疑惑ではなく事実であることを本人も認めました。せっかく政治が良い流れで来ていたのに本当に残念です。これで国民民主党への動きが止まることは確実です。

■米国大統領選挙■
1ヶ月も前から米国では「もしトラ」どころか「もうトラ」「ほとトラ(殆どトランプ)」と言われていましたが、とうとう「確トラ」となってしまいました。
投票前は大接戦が伝えられて少なくとも結果が出るまで数日はかかるだろうと言われていましたが、開票から数時間でトランプ氏が優勢となり、開票が始まってから8時間後にはトランプ氏が勝利宣言しました。最終的には過半数の270票を遥かに超える300票を上回る圧勝です。
今回ほど世論調査は当てにならなかったことはありません。事前の大激戦の報は何だったんでしょう?ハリス氏は惜敗どころか激戦州と言われた7州全部で敗北しました。3日のミスターサンデーで木村太郎氏が「トランプ圧勝」と予測していましたがその通りとなりました。木村氏は激戦州も全てトランプ氏勝利と予想していました、こんな予想をしていたのは木村氏だけです。木村氏に言わせれば今回もまた「隠れトランプ」が沢山いたということです。若者はインタビューを受けても「トランプ支持」とは言わないそうです。何故かと言えば「将来の就職に影響するかも知れない」とのことで笑ってしまいます。良識ある人は誰もトランプ氏に投票しないけど劇場型の政治を求める人が多かったというこでしょう。
そもそもハリス氏はいきなり大統領候補に担ぎ上げられたので予備選を勝ち抜いてきたわけではありません。民主党員としては「自分たちが選んだ候補」ではありませんでした。ハリス氏の資質にも問題がありました。「ハリス氏の打ち出した政策は?」と聞かれても誰もはっきり答えられなかったという現実があります。ハリス氏は「あんなトランプ氏を大統領にしていいのか?」と言い続けるだけでバイデン政治の総括も自分が大統領になって何をしたいかも何一つ訴えていなっかたために予想外に大敗したのだと思います。ハリス氏は4年後の民主党候補にはなれないでしょうね。
「トランプ氏優勢」が伝えられて我が国の株式市場は急上昇、為替は円安が進みました。株高は理解出来ますが、円安は理解出来ません。そもそもトランプ氏はドル安論者のはずです。ただ市場ではトランプ氏が関税の引き上げを行うことによって輸入品の価格高騰がインフレを招き金利高を呼ぶことによって円安になると考えられているようです。
しかし前回のトランプ政権で米国通商代表を務めたライトハイザー氏は1985年のプラザ合意の主犯とも言われる人物です。レーガン政権時に日米貿易摩擦が発生し、米国通称副代表を務めたライトハイザー氏らの主張によって、G5のプラザ合意の結果1ドル235円から150円まで円高が進み、我が国貿易産業が大打撃を受けました。このライトハイザー氏がもしトランプ政権の財務長官にでも就任したら円高は確実です。しかし1985年に米国の主要官僚だった人間がまだ現役で活躍していることにも驚かされます。年齢を調べたら77歳でトランプ氏の一つ下でした。
しかしこれでまた我が国と貿易と防衛で大揉めするんでしょうね。USスチールの買収の話は完全に消えましたね。可哀想なのはUSスチールの従業員です。きっと倒産に追い込まれますね。自動車始め関税が引き上げられることは間違いありません。トランプ氏は米国経済の繁栄を第一に考えることは間違いありませんから、多くの分野で日本経済にマイナスに働きます。
私が恐れるのはトランプ氏が前回以上に強硬なトランプ政策を実行するのではないかということです。2期目はありませんから後のことを考える必要はありません。またトランプ氏は議会政治家ではなくいきなり大統領選挙に名乗りをあげた人物ですから党のことを考えていません。自分の後に共和党がどうなろうと構わないと思っていると思います。そうなると財政のことを含めてやりたい放題の政治をやると思います。その結果米国が大赤字になっても気にしないと思います。
また上院でも共和党が過半数を占めることが確実です。下院も優勢です。下院も共和党が過半数を占めればトランプ新大統領にとっては「トリプルレッド」となりやりたい放題です。上下院選挙も結果もこうなると言うことはトランプ氏に対する支持もさることながら民主党政治に対する人々の不満がそれだけ強かったといいうことだと思います。
尤も野次馬として見た場合、ハリス氏より遙かに面白いトランプ劇場の開幕が楽しみです。
しかし何故かわかりませんが、欧米の政治体制が大混乱です。今年は7月に英国とフランスで総選挙が行われ英国では労働党が大躍進して総議席数の3分の2近い議席を獲得して14年ぶりに政権交代しました。
また、同じく7月に行われたフランスの総選挙では定数557議席のうち左派連合が180議席を獲得して第一勢力となりました。一方マクロン大統領が率いるルネッサンスを中心とする与党連合アンサンブルは議席を86議席も減らして第二勢力に後退しました。極右の国民連合も142議席を獲得して第二勢力に迫る勢いです。ドイツでも今月に入ってショルツ首相が財務省を解任して連立政権が崩壊しました。早ければ3月にも連邦議会選挙が行われる予定です。
そして今回の米国大統領選挙と欧米列強が全て政権交代あるいはそれに近い状況です。ドイツでも政権交代になれば来年のG5のメンバーは総入れ替えということになりそうです。何故今主要国で軒並みこのようなことが起きるのでしょうか?はっきり言えるのは既存政治に対する強い不満です。現状維持を望む人々が少なく多くの人が変革を求めているということです。日本を含めて国民の圧倒的な支持を集めているリーダーがどこの国にもいません。あえているとすればトランプ新大統領かも知れません。

■徒然思うこと■
・大企業の減益・
最近大企業の減益決算が目立ちます。特に自動車産業が大崩れです。その中でも酷いのは日産自動車で、9月の中間決算が90%を超える大幅減益となりました。減益の原因は中国市場では廉価なEVに押され、北米市場では販売が好調なハイブリッド車やプラグインハイブリッド車のラインアップを持っていませんでした。これに関しては完全に経営者の判断ミスです。トヨタはEV一辺倒にならずにハイブリッドとプラグインハイブリッド車の販売に力を入れていました。この両社の経営判断の違いが「多少の減益」と「大減益」の違いとなりました。しかも日産は9000人をリストラする合理化案を発表するとともに内田社長が11月から役員報酬の半額を自主返納することも発表されました。内田社長の報酬額は6億5700万円です。半額を返納しても3億2850万円を受け取ることにリストラされる9000人が納得するとは到底思えません。
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