■波乱の年明け■

 元日の夕方に能登半島を襲った大地震、2日の夕方に起きた羽田空港でのJAL機と海保機の衝突事故と二つの大事件が日本列島を揺るがせました。一つは天災、もう一つはおそらく人災という違いはありますが、のどかな正月三が日が大ニュースで溢れました。しかし二つの大事件における対応の大きな差に驚かされます。

 国と自治体の支援の動きの遅さにイライラします。現在の日本において一部の地域に水と食料を届けることも出来ないのでしょうか?また被災した自治体においても2022年の5月に震度6の地震を経験しているのに避難所の準備と物資の確保もしていなかったのでしょうか?JAL機の乗務員の適切な判断と誘導で乗客乗員全員が避難出来ていることと比べて自治体の対応のあまりのお粗末さに呆れてしまいます。大地震に備えての防災訓練をやっていなかったとしか思えません。

 政府の対応もGDP世界第3位の国の救援体制がこんなお粗末なものかと驚かされます。防災担当大臣は何のためにいるのでしょうか?避難所での凍死やエコノミー症候群による死者が出たらそれは国や自治体の責任です。と言っていたら自衛隊が精一杯頑張っている様子が伝わって来ました。何しろ救援を困難にしているのは災害が起きた能登半島の海岸沿いの道路の殆どが崖崩れで不通になったことです。自衛隊のヘリは飛ぶことが出来ても拠点を設けることが出来ず救助が滞っているようです。そうなるとやはり自治体の防災計画が問題だったと言わざるを得ません。

 また、こういうことを言うと非難を浴びるでしょうが、個々の自宅でも防災の備えをしていなかったのでしょうか?これだけ群発地震が起きている地域で防災に備えて水や食料の備蓄を呼びかけられているのに何も備えをしていなかった家がいかに多かったかということです。私たち都会に住む人間の方がよほど災害に対する備えをしているかも知れません。

 しかし日本全体の防災の備えがこんな調子だと南海トラフ大地震が発生したらいったいどんなことになるのでしょう?改めて地域防災計画の見直しが必要です。最近、防災省を作るという話もあるようですが、これまでの防災担当大臣は災害が起きた時だけの対応をするだけで地域の防災計画については全く関知してこなかったようです。

 今回の能登半島地震で私が驚いたのは1981年の「新耐震基準」導入後に建築された建物の倒壊が数多く見られたことです。「新耐震基準」で建てられた建物ならば震度6強の地震にも耐えられたはずですが、今回の地震では幾つもの建物が倒壊しました。専門家の解説を聞いてみると「新耐震基準で建築された建物でも2年前の地震を含むここ何年かの群発地震でダメージが蓄積して倒壊した可能性がある」とのことでした。東京では1981年以降で最大の地震は2011年の3.11で震度5強でしたから何とか大丈夫だと思います。尤も今後30年間で発生確率70%と言われる首都直下地震で想定されるマグニチュードは7と言われています。マグニチュードと震度の関係で言えば同じマグニチュードでも震源からの距離が近ければ震度は大きくなりますから、「首都直下」では震度7以上を覚悟しなければなりません。そうなると新耐震基準で建てられた建物でも安心出来ません。

 但しインフラが整っている首都圏ではライフラインの復旧に要する日数は電気が6日、上水道で30日、ガスで55日となっています。もしこれを信じるならば建物が倒壊しなければ僅か1週間で電気が復旧するのですから電池もカセットボンベも1週間分備蓄しておけば良いと言うことになります。但し自宅の調理器具がガスコンロで暖房がガスストーブの場合には2ヶ月間使えないことになりますからIH調理器やエアコンが必須ということになります。また水に関しては当座はバスタブを常にいっぱいにしておけば生活用水としては十分かも知れませんがそうなるとお風呂には入れません。もし風呂に入ろうとしてもガスが使えなければ沸かすことが出来ません。まさかお風呂を電気で沸かしている方はいないと思います。そうなると必要になるのは携帯シャワーです。私も以前に海水浴に行く時に使いましたが、災害時にはぬるま湯で使用すれば風呂が使えなくても問題ありません。一つ常備された方が良いと思います。また今回の状況を見ていると、電気自動車は都市部しか使えないことがはっきりしました。最低限でもPHVですね。そして自家用車の燃料は常に半分以上を維持するようにして下さい。

 でも今回の能登半島地震で最も被害の大きかった珠洲市で1975年から28年間に渡って原発反対運動が行われたのをご存知でしょうか?住民の根強い反対で珠洲原発は断念に追い込まれましたが、28年間に渡り当時の中西県知事始め歴代市長、議会も全て原発誘致の姿勢でした。誘致に関わっていた人たちが今回の地震を見てどのように考えているか話を聞いてみたいと思います。もし原発が建設されていたらと思うとゾッとします。しかし今回の過疎地の実態を見ていると、過疎地の住民が過疎から抜け出すには大規模な企業誘致しか道が無いとも言えます。

 今回の災害を受けて全く交通遮断されてしまった地区の人々が今後の再建についてどのように考えるのか大変興味深い問題です。今回分断された地域のインフラを整備しようとしたら膨大な資金が必要となります。寸断された半島を周回する道路整備にどれぐらいの費用が必要か想像も出来ません。と言って「過疎」を大事にしなくてはという気持ちにもなります。今回地震から10日も経っているのに「連絡不能」という地域があることに驚かされましたが、行ってみると蓄えた食料、山からの水等でなんの生活の苦労も無いように見えます。ただ、電気だけは無いとまさか今どきランプ生活というわけにもいかないと思います。と言って山奥まで電柱を整備するのも大変です。今後は太陽光等の設備で自活出来る過疎地を作り上げることがベストかも知れません。

 ところで、いい加減な報告を連発して問題になっている能登(志賀)原発が営業運転を開始したのが1993年ですが、志賀町では珠洲市ほどの強い反対運動が起きませんでした。今回の件で稼働反対運動が起きるかも知れませんね。




■政治資金規正法違反■

 世の中が能登半島地震一色の中でも検察の捜査は続いています。と言っていたら自民党の池田佳隆議員がいきなり逮捕されました。政治資金規正法違反ですから立件されることはあったとしても逮捕は無いと思っていたのでビックリです。よほど東京地検特捜部の印象を悪くする言動があったのだと思います。そもそも池田議員は多額のキックバック問題が報道されるようになってから説明責任を果たすどころか仮病を使って全く公の場に姿を見せませんでした。これには地元の支援者も怒り心頭です。大人しく嫌疑を認めて殊勝にしていれば逮捕までとはならなかったと思いますが、秘書に命じて証拠隠滅まで図ったものですからいきなり逮捕となりました。

 今後は大野泰正、谷川弥一議員が立件されるでしょうが、それでは何にも面白くありません。何となく政治の世界では不正額が4千万円を超えないと立件されないという奇妙なルールが確立されそうですがとんでもない話です。1千万円以上の不正を犯した者は全員立件して欲しいと思います。これだけ大騒ぎして逮捕に至るのが議員1人と何人かの会計責任者だけで、後は数人の議員の立件だけでは到底納得出来ません。出来れば大臣経験者の1人ぐらいは逮捕してもらいたいと思います。

 現在立件が噂されている中で最も大物は西村前経産大臣です。捜査のポイントは2022年に安部元総理がキックバックを止めようと言い出して一時は止めることになったのに復活を望む声に押されてキックバックが再開されたことですが、再開した時の安部派の事務総長が西村前経産大臣でした。また安倍派の現在のようなシステムを作り上げたと言われる森元総理の取り扱いも注目ですが、どんなに酷いことをやっていても時効ですから現実的にはお咎め無しです。直近の報道では安倍派の首脳たちは事務局長の会計責任者と過去の会長だった故人の細田氏と安倍氏に全ての責任を被せるつもりのようです。

 また二階元幹事長が任意の事情聴取を受けたことも注目です。二階派では個別の議員の話が聞こえて来ません。もしかしたら二階元幹事長がお金のことは全面的に仕切っていたのかも知れません。

 そう言っている中で岸田総理が「政治刷新本部」を設置しましたが、その38人のメンバーのうち派閥別で最も多いのが安部派の10人というのは誰が見ても納得出来ない話です。そもそもこの話は安倍派と二階派がその原因となっているのにその派閥から刷新メンバーを出すというのはとんでもない話です。早くも岸田総理の袋叩きが始まりそうです。

 しかし次の総理になって欲しい人は?というアンケートで必ず「誰もいない」がトップになるのは本当に嘆かわしいですね。尤も誰にも期待されな野党はもっと嘆かわしいですけど。




■今年のビッグイベント■

 年賀状には今年の楽しみとしてパリオリンピックと大谷選手と山本選手の活躍と岸田総理の退陣と書きましたが、本当の今年のビッグイベントは米国大統領選挙です。

 「もしトラ」という言葉をご存じでしょうか?これは日経ビジネスが2016年にトランプ前大統領がヒラリー・クリントン氏と大統領選挙を争っていた時に「もしトランプが大統領になったらどうなる?」という記事を組んだ時に使われました。当時は誰1人としてトランプ氏が大統領になるとは思っていませんでした。しかしあり得ないことが起こってしまいました。もし再度あり得ないことが起こってトランプ氏が大統領になったら西側諸国の秩序はメチャクチャになります。トランプ氏は最近「ホワイトハウスに戻った時には就任初日に独裁を敷く」と述べています。民主主義陣営のトップが「独裁者になる」と公言しているのです。トランプ氏は大統領になった時にまず行うのはこの4年間の「復讐」です。その筆頭がバイデン大統領です。また、トランプ氏は現在議事堂襲撃事件を始め91件の罪状で捜査機関から起訴されていますが、もし大統領になったら大統領権限でこれらの起訴を全て取り下げさせる気です。

 一方民主党はと言えば未だ有力候補は現れていません。しかし現在81歳のバイデン大統領の再選を選挙民が認めるかどうかはなはだ疑問です。どちらにしてもハチャメチャな大統領選挙になることは間違いありません。バイデン大統領の再選が不確かな今後の1年は西欧同盟諸国もいい加減な決断は出来ません。もしトランプ氏が大統領になったら即日ちゃぶ台返しなることがわかりきっているからです。我が国もうかうかしていられません。我が国はトランプ氏に防衛費をGDPの2%に近づけることを約束させられました。もしトランプ氏が再選されたら更に「アメリカファースト」の渦に飲み込まれます。これに対抗できる政治家が日本にいるでしょうか?

 現在の二大国際問題であるロシアのウクライナ侵攻とイスラエルとイスラム勢力ハマスの戦いにも大統領選挙は大きく影響を与えます。共和党内には今以上のウクライナ支援は止めるべきだとの声が高まっています。アメリカファーストのトランプ氏が大統領に就任したら米国のウクライナ支援が激減するかも知れません。現時点でもウクライナがロシアの侵攻を押し返すことが出来ると思っている人はいないと思いますが、それ以上にウクライナにとって悲惨な状況になるかも知れません。また、ガザ地区におけるイスラエルの軍事行動に関しては民主党議員から抑制の声が挙がっていますが、もしトランプ氏が大統領となり、共和党が更に下院で議席を増やすようならイスラエルを圧倒的に支持するでしょうから、第5次中東戦争を引き起こすことになるかも知れません。もしトランプ氏が大統領に返り咲いたら国際社会における一番の火種になることは間違いありません。

 また間近に迫った台湾の総統選挙にも注目です。もし与党民進党の賴氏が敗れることになったら日米の対中戦略に大きな影響を及ぼします。中国との融和を唱える野党候補が当選すれば「台湾有事」と言う言葉は雲散霧消となります。

 このメッセージが皆さんのお手許に届く頃には既に選挙結果が出ていると思いますが、私の大胆かつ自分勝手な予想では投票直前になって野党第二党の台湾民主党の柯氏が突然立候補を取りやめて野党国民党の候氏が当選すると思います。そもそも当初は野党候補が一本化される予想でしたが直前になってか柯氏が「やはり出馬する」と言いだして野党分断となりました。ただ実はこれが野党側の作戦で始めから野党統一候補で戦うよりも直前になって一本化した方が勝利する可能性が高いと考えたのではないかと思います。さて結果はどうなりますかお楽しみです。なお、このメッセージは12日に発送します。




■徒然思うこと■

・ふるさと納税をやめよう。なんて言いたくない・

 12月26日の日本経済新聞の全面広告とテレビCMでふるさと納税ポータルサイトの「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクがこのようなコメントを発信しました。

 先月のメッセージで「ふるさと納税のルール違反は何故無くならないのか」とお話させて頂きましたが、私以外にもふるさと納税制度に問題があると考える人がいるようです。それもよりにもよってふるさと納税ポータルサイトの走りの「ふるさとチョイス」の一大広告というのが興味深いです。テレビCMを連発している「ふるなび」に対するあてつけですかね。

 しかし上位10%の自治体への寄付額が寄付総額1兆円の6割にも上るという歪な構造を捨て置くことは出来ません。それに輪を掛けているのがふるさと納税のポータルサイトを運営者の節度の無い行動です。異常な量のテレビCM、脱法とも言うべきポイント付与、自分達の自分勝手な行動が税収の流出に悩む自治体にどれだけ被害を及ぼしているべきか考えるべきです。

 本来皆さんが居住する自治体の行政サービスに使われるべきお金の多くの部分が海産物や牛肉を返礼品とする一部の自治体に流れるという歪みがもう限度を超えるレベルになっています。喜んでいるのはウハウハしている上位の自治体とポータルサイトを運営している企業だけです。

 首都圏と地方の税収格差の是正というふるさと納税の本来の趣旨から逸脱した返礼品競争が制度の歪みを促進しています。国民の目が返礼品にばかり行くので都市部ばかりでなく、本来税収不足の過疎地の自治体に全く寄付が流れなくなっています。逆に流出する税金が寄付額を上回る過疎地の自治体も出て来ています。納税者にとって魅力的な返礼品を提供出来ない自治体には寄付が集まりません。これは大きな問題です。制度自体の見直しが必要です。

 と言っても税制に手を付けるのは大変ですから、一つの自治体に対する寄付金の限度額を1万円とするとか色々考えられると思います。巨額の寄付金を受け取っている自治体も今後もこのような寄付が続くとは考えないで予算を立てる必要があります。

 まず私たちとしては「ふるさと納税はしなければ損」という考え方を変える必要があります。そう言えば私もずいぶん前のメッセージでふるさと納税を大いに推奨した時期がありましたが、まさかあの制度がこれだけ大きなスケールになって自治体間の不公平を生み出すとは思っていませんでした。

 しかし、自分の住んでいる自治体の行政サービスを低下させない唯一の方法は「ふるさと納税」をしないこと、と言うのはあまりに皮肉な気がします。
 

・期待出来る新春ドラマ・

 本当につまらなかった昨秋のドラマでした。普通は警察物のドラマは見応えがあるのですが、昨秋の警察ドラマの筆頭の「ONE DAY~聖夜のから騒ぎ」は二宮和也、中谷美紀、大沢たかお、江口洋介といった主演級の俳優を揃えながら何の感動もなく終わりました。またその次の時間帯の「トクメイ!警視庁特別会計係」もそれに輪を掛けて緊迫感の無い警察ドラマでした。そもそも橋本環奈を警察ドラマの主人公に据えるセンスが理解出来ません。

 それに比べて新春ドラマは警察(検察)物、医療物と緊迫感のあるドラマが多いので大いに期待出来ます。私が期待するのは瀬戸康史と桐谷健太主演の「院内警察」櫻井翔主演の「大病院占拠」の続編の「新空港占拠」、Snow Manの岩本照が主演で白石麻衣が相手役の「恋する警護24時」です。また反町隆史主演の「グレイトギフト」には一番期待しています。1月10日に始まった「となりのナースエイド」はまあまあでしたね。

 1月7日に始まった大河ドラマ「光る君へ」の初回視聴率が12.7%と大河ドラマの過去最低視聴率を記録しました。早期打ち切りが懸念されます。しかし今どき紫式部を取り上げるとはどういうセンスですかね? ただ低視聴率の「どうする家康」の次の作品という不運もあったと思います。高視聴率の大河ドラマの次の作品だったら「とりあえず初回だけは見てみるか」ということになったと思います。

 新春ドラマ一覧で妙に感じるのがテレビ東京で深夜ドラマが多数放映されることです。0時過ぎのドラマ、特に最も遅いドラマは午前2時35分開始です。この時間帯のドラマをいったい誰が見るのでしょうか?

・もしドラ・

 「もしドラ」という言葉をご存知でしょうか?これは2009年に発刊された『もし高校野球部の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』という250万部を超えるベストセラーですが、実は「もしトラ」はこの「もしドラ」のパロディなんですよね。私も最近になってこの本を読んだのですが、登場人物の人間関係の描写が秀逸で、涙無くして読めない本です。ストーリーとしては「下剋上球児」ですが、そこまでに至る過程が本当に科学的で、人生を生きていく上で参考になります。また、高校野球を通してドラッカーの理論を良く理解出来ます。まだお読みで無い方は是非ご一読を。 でも「もしドラ」は最高ですが「もしトラ」は勘弁して欲しいです。


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