■不信感いっぱいの政治情勢■

 最近の私のメッセージを読み返してみると岸田総理に対する不平不満だらけです。安倍元総理の時でもこれほどの不平不満は感じませんでした。何故岸田総理についてだけこんなに批判的になるのか考えてみたら、信念が無いばかりか実力に見合わないことばかりしようとしているからだと思います。安倍元総理についても色々不満はありましたが、安倍総理の政策にはそれなりの信念がありましたし、実力もありました。それに対して岸田総理は自己の政治家としての力量を超えた政策を立て続けに打ち出しました。昨秋から旧統一教会問題や閣僚の罷免に関しては優柔不断な態度をとりながら、12月になったらいきなり原発政策と防衛政策の大転換を打ち出しました。特に防衛政策に関しては国会審議を全く経ずに閣議決定で決めたことをさも確定したかのように新年の欧米訪問とバイデン大統領のとの会談で披露して「よしよし」とお褒めの言葉を頂きました。

 しかしこれらの政策が本当に岸田総理の信念に基づいて進められているのでしょうか?これまでの自分の政治信条とおよそかけ離れたことをしようとしているとしか思えません。とても思いつきで進めていいレベルの政策ではありません。

 ちょっと気になるのは岸田総理と自民党の関係です。自民党から岸田総理を危うくする発言が目立ちます。まず第一は茂木幹事長の「こども手当の所得制限撤廃」です。これまでの自民党の政策の180度転換です。いきなり党内からこんなことを言い出されて岸田総理も対応に苦しんでいると思います。

 次に育休中のリスキリングです。これも岸田総理が目玉の政策としていましたが、鈴木貴子議員に「育休中のママから、そんなこと出来るわけがない」という声が沢山届いていると言われて釈明に追われました。その中で「私も3人の子供がいて育児の大変さは身をもって体験している」と発言したら昨年のある雑誌の総理夫人のインタビューで、岸田総理の夫人が「主人は東京にずっといて、育児は私のワンオペでした」という記事が紹介され赤っ恥を書きました。

 また平将明議員が、労働力を増やすために130万円の壁をどうにかしたらどうだ?と質問し、これが労働力不測の原因ではないかと問われた岸田総理は思わず「検討する」と答えてしまいましたが、これは裏方の作成した答弁原稿の失敗だと思います。これはそう簡単にはいかない問題です。130万円を増額しても次に「140万円の壁」「150万円の壁が出来るだけの話です。そもそも「130万円の壁」は共稼ぎの夫婦だけの問題ですから、この制度をいじったとしても、どれぐらいの労働力が増えるか疑問です。

 しかし自民党議員は案外良い質問をしていますが、ある意味岸田総理の足を引っ張るような質問が多いと感じます。党内での力関係に何か変化が生じているのでしょうか?一方、立憲民主党はと言えば、政務秘書官の外交同行時のお土産の買い物について質問するなど時間の無駄遣いの質問が多く、やはり政党としての力の無さを感じます。岸田総理の長男の首をとっても大した問題ではありません。せっかくの質問時間なのですから、もう少し重要な点に絞って質問してもらいたいと思います。上述の自民党議員の質問は防衛費の増額に対する増税に質問が及ばないように敢えて時間稼ぎをしているのかも知れません。と言っていたら菅元首相辺りから岸田下ろしの動きが始まりました。早ければG7後に動きがりそうです。




■LGBT問題■

 荒井前秘書官の暴言で岸田総理は想定外の大問題に取り組まなくてはならなくなりました。LGBT問題です。これについては2021年に超党派の議員連盟が「LGBT理解増進法案」の成立を目指したものの、最終段階で「差別禁止」に難色を示した自民党の保守派の議員の反対で国会提出が見送られました。しかし今回は世の中の動きも大きく変わりつつあります。また5月には広島でのG7サミットも控えています。G7のメンバーで同性婚が認められていないのは日本だけです。岸田総理はG7で海外メディアから「なぜ日本は先進国の中で唯一同性婚を認めていないのか?」という質問を突き付けられたらどう答えるつもりでしょうか?国会では「私もニューヨークの小学校でマイノリティだった」と発言してLGBTを理解しているかのように振舞いましたが、「次元が違う」と逆に自分の見識の低さを露わにしてしまいました。

 海外諸国と異なり我が国でLGBT問題がこれだけ大きな問題となるのは日本の国民性が関係していると思います。個人主義でなく全体主義、常に同一性が求められ、個人の尊厳よりも全体の秩序が大事という国民性のせいだと思います。

 ところで政府の対応ですが、岸田総理の発言を聞いていると「同性婚を認めると社会が変わってしまう」と発言し、差別禁止と同性婚を認める法案について積極的に賛成する意思が無いことは明確ですが、社会がどう変わるのか、変わったら何がいけないのかについては明確に答えません。ただし総理の意向に反して世の中が「LGBT理解増進法案に賛成」に同調する雰囲気となっています。また、上述のようにG7前にこの法案を通しておけば各国首脳にアピール出来ます。また、今回法案成立の可能性が高い理由の第一はこの問題に関して法案化に反対していた安倍元総理はいません。以前から猛反対していた高市大臣だけでは押しとどめられないと思います。

 しかし同性婚について考える上で、改めて憲法24条を読み直してみました。憲法24条では「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し・・・・」どう読んでも男女の合意無しには婚姻の成立は難しそうです。日本でも渋谷区、世田谷区を始め250以上の自治体が同性婚を認めていると報じられますが、あれはパートナーシップ制度であって法律上の結婚ではありません。いくら憲法14条で法の下に平等が定められていても相続権が認められない限り法的には結婚ではありません。大変な作業となるとは思いますが、やはり憲法24条の改正が必要ではないかと思います。




■新型コロナウイルス感染症2類から5類へ■

 5月8日に新型コロナウイルス感染症が2類から5類になることが決まりました。主な変更点は下図の通りです。



 私達にとって最も身近な問題はマスクの着用です。2類から5類への変更でマスクの着用に関しても自己判断に任されることになりました。何とも無責任な決定です。ちょっと前には屋内のマスクは不要なるという話しでしたが、医療従事者と街の声に押されて「自己判断」ということになりました。と言っていたら2類から5類になってもいないのに、政府はこれまで「屋内ではマスク推奨」という方針を覆して、3月13日にから「マスクの着用は個人の判断に委ねる」としました。3月13日というのが何の日かよくわかりませんが、おそらく岸田総理の「卒業式ではマスク着用しないことを基本としたい」という発言を受けてのことだと思います。結局政府の政策って本当に必要な時期に実施されるのではなくて様々な行事に対応する感じで日にちを決めているんですね。しかし「マスクの着用について個人の判断に委ねる」と言うのはマスク着用を強制も推奨もしないということです。それなら何故はっきり「マスクは不要です」と言わないのでしょうか?また感染が広がったら個人の責任にするつもりですかね?

 そもそも厚労省は新型コロナウイルスに関してエビデンスの収集を軽んじて来ました。ワクチンの効果についても時の経過によって抗体量がどれぐらい減少していくかについても当初だけで計測をやめてしまいました。感染者の抗体量も計測しなかったので、どれぐらいの抗体量があれば感染防止になるのか未だにわかりません。

 マスクについても当初はスーパーコンピュータ富岳によってマスク着用効果や不織布マスクの効果についても大きく報じていましたが、もう1年以上マスクの効果に関する厚労省の発表はありません。米国などではマスク着用と不着用の効果を検証して5パーセントほど感染防止効果があると発表していますが、我が国ではそのような実験が行われたという話も聞きません。結局手探りで大した感染防止策もみつからないまま無策で第8波まで来てしまいました。何のための役所なんだかわかりません。私達も未だにどういう場面で感染するのかわかっていないので、完全に感染を防ぐ術がわかりません。専門家もわかっていないと思います。そうでもなければ岸田総理や感染症分科会の尾身会長が感染することも無かったと思います。本当に厄介な感染症です。

 しかし2類から5類への変更は、毎日200人以上の新型コロナウイルス感染症による死者が出ている時に決めることでしょうか?その無神経さと危機感の無さに驚きます。厚労省はとっくに第8波は過ぎ去ったと考えているでしょうが、と言って第9波に備えているとは到底考えられません。




■徒然思うこと■

・最近のニュースとワイドショーの話題・

 この半月ばかりの話題と言えば一にロシアのウクライナ侵攻、二に連続強盗事件、三に回転寿司店での迷惑行為です。

 ロシアのウクライナ侵攻はもうすぐ1年が経とうとしていますが膠着状態が続いています。欧米諸国がこれだけ軍事支援をしているのですから、もう少しウクライナがロシアを押し戻してもいいと思うのですが、ロシアは一向に引き下がりません。プーチン大統領は第2次世界大戦時のスターリンのようにいくら多くの犠牲が出ても決して戦いを止めようとはしないかも知れません。そうなると本当に両国の犠牲は増えるばかりです。米国を始めNATO諸国もそろそろ支援疲れが出ていると思います。各国の軍装備の備蓄もだいぶ余裕が無くなって来ています。笑っているのは軍需産業だけです。

 連続強盗事件については刑事事件でこれほど各局が時間を費やした記憶が無いほど、どの局も大々的に取り上げています。マニラのビクタン収容所のいい加減さについては皆さん驚かれていると思いますが、フィリピンというのはそういう国です。私が15年以上昔のメッセージでマニラ郊外のモンテンルパ刑務所を訪問したことを書いたのですが覚えている方はいらっしゃるでしょうか?

 第2次世界大戦の戦犯として死刑を宣告された70人以上の日本兵が収容されていた刑務所ですが、私は個人的に興味があって見学しました。その時も全てが賄賂賄賂で、まず戦犯のお墓を案内してもらうのに1000ペソ(約2000円)、「1000ペソ払えば銃を撃たしてやる」と言われましたが、これは丁重にお断りしたら「1000ペソ払えば刑務所の中を見せてやる」と言われて思わず1000ペソ払って刑務所の中に入れてもらいました。屋上から囚人たちを撮影したら「もう1000ペソ」と要求されてしまいました。しぶしぶ払ったら、最後に「もう1000ペソくれたら日本人の死刑囚に会わせてやる」と言われましたが、これも丁重にお断りして帰って来ました。このお金を要求して来たのは全て警官と看守です。この当時でもマフィアのボスのような人間の部屋にはテレビやエアコンも有り、賄賂を弾めば外出も可能という話でした。15年経っても全くフィリピンという国の賄賂体質は変わっていません。しかし今回の事件の報道でフィリピンの刑務所や収容所に収容されている犯罪者は、今後は賄賂で好き勝手なことが出来なくなって困っているでしょうね。

 しかし番組時間の半分以上を使って報道するようなニュースでしょうか?確かに凶悪犯ですし、収容所の中からネットで実行者を募り強盗の指示を出すという例のない犯罪ですが、世間一般の人がそれほど関心を持っているとは思えません。

 それよりは飲食店の迷惑行為のほうがよほど世間の人の関心が高いと思います。しかしこれについてはメディアが報道すればするほど飲食店のダメージが大きくなります。事件の舞台となった回転寿司店では売り上げが落ち込むばかりか株価も暴落しました。

 さて今回の加害者の罪ですが、刑事と民事がありますが、刑事では器物破損と威力業務妨害罪が成立することは間違いありません。加害者と保護者は早速謝罪に行って断られたそうですが、きっと彼らが想像する以上の刑事罰と損害賠償になると思います。加害者と投稿した少年たちは既に書類送検されたそうですが、単なる刑事罰以上の罰が既に加害者に加えられています。それはネットリンチです。加害者の通う学校や個人名も既にネットに晒されていて、今後加害者の少年は一生その罪を背負っていくことになります。既に学校も退学したそうです。今後彼に対するネット攻撃がどれぐらい続くか想像も出来ません。

 一方民事についてはどこまでの損害賠償が認められるか難しい問題です。舐めた醤油さしの容器代は間違いなく請求出来るでしょうが、世間一般の人が考えるように、今回の行為を受けて各店舗で行われている迷惑行為の防止策の費用まで賠償対象と認められれば金額は軽く1億円を超えます。不法行為に対する損害賠償には免責がありませんから例え自己破産しても永久に払い続けなければなりません。

 現在のようなネット社会で今回のような事件を起こさないように子供を教育していくのは親の責任でしょうが、それも大変だと思います。若者に言っても「何言ってんだ」と思われるかも知れませんが、「ネット上の悪戯で一生を棒に振ることがある」ということを知る必要があります。「後悔先に立たず」というのはこういう時に使う言葉かも知れません。

 やはり未成年についてはSNSを利用不可にすべきかも知れませんね。

・カード会社のキャンペーン競争未だ収まらず・

 先月のメッセージでクレジットカード会社に加盟店手数料を管理する会社から支払われる手数料が引き下げられる恐れがあり、そうなるとポイント大盤振る舞いのキャンペーンはなりを潜めるだろうとお話しましたが、それどころ年度末を控えているせいか各カード会社のキャンペーン競争が激しさを増しています。私も思わず一つキャンペーンに乗っかってしまいました。ANAアメックスゴールドというカードです。このカードは誠に下品なキャンペーンを実施していて、入会して3ヶ月以内に150万円カードを利用すると9万マイルを獲得できるというものです。通常のカード利用で9万マイルを獲得するためには900万円もカードを利用しないとなりません。それが150万円で獲得できるのですからビックリです。3ヶ月で150万円とハードルは高いですが、海外旅行マニアにとってはマイル獲得の絶好のチャンスかも知れません。殆どの方は「3ヶ月で150万円も使えるわけないじゃないか!」と仰ると思いますが、色々裏技があります。これから6月ぐらいまでは様々な税金の支払時期です。税金の支払いにこのクレジットカードで支払うことができることは間違いありませんが、ポイントの付与は通常の半分の0.5%ですが、カード利用額は達成出来ます。またカード利用額のハードルをクリアするのに便利なのはアマゾンギフト券の購入です。ある意味商品券の購入がカード利用額に算入されると思えばわかりやすいです。

 ところで皆さんは航空会社のマイルは期限が3年間と思われていると思いますが、これにも裏技があって延長することが出来ます。まずJALのマイルの有効期限を3年から5年に延ばす方法が見つかりました。これは55歳以上の人だけに認められる裏技ですが、JMB(JALマイレージバンク)WAONカードというイオン系のカードに加入するだけでマイルの有効期限が60ヶ月に延びます。ビックリですよね。もう一つANAのマイルについても期限を無期限に延ばす方法があるのですが、あまりにマニアックで手間がかかるので今回は省略します。

・安倍晋三回顧録・

 今月8日に安倍元首相の回顧録「安倍晋三回顧録」が発売されました。引退した政治家の思い出話と異なり、元総理でかつ現役の派閥の長でもある政治家の生の声を聴けるというのは貴重な経験だと思います。

 465ページのハードカバーですが、本当に興味深い内容で一気に読み終わってしまいました。特に官僚に関する記述を読むと、この回顧録を存命中には発刊出来なかっただろうと思うほど敵対的です。例えばいくらPCR検査を増やすよう言ってもこれに従わず、厚労省幹部は私に対して、口には出さないけれど、「素人が何を言っているんだ」という感じでした。とか、もっと凄いのは2014年の「安倍政権を倒そうとした財務省との暗闘」のくだりです。この時の財務官僚は当時の谷垣幹事長を担いで安倍政権批判を展開し、私を引きずり下ろそうと画策したのです。と激しく当時の財務官僚を罵っています。このような官僚の動きがあったとはビックリですし、これを明らかにしたことにもビックリです。

 その他にも「私(安倍)は密かに疑っているのですが、森友学園の国有地売却問題は、私の足を掬うための財務省の策略の可能性がゼロではない」とも発言しています。このように書かれた厚労省や財務省の幹部はどのように感じているでしょうね。存命中に発刊されていたら面白かったでしょうね。何といっても元総理の発言ですからね。今後国会議員、特に安部派の議員と役所、特に財務省との戦いが始まるような気がします。また経産省と財務省の暗闘も見ものになるかも知れません。 しかし総理大臣とは大変な仕事なんですね。大局的に物事を見る目と根回しの能力と実行力が必要なことがよくわかります。鳩山さんや菅さんが務まるような役職ではありません。

 その他にも「桜を見る会」問題や五輪延期問題等様々な項目に関して切り込んだ質問が行われ、初めて明かされるような回答が目白押しです。また2018年にはプーチン大統領との間で「2島返還」でほとんど合意していたことが明かされたのには驚きました。

 政治ニュースに興味のある方には是非ご一読願いたいと思います。私はこのメッセージでもずいぶん安倍元総理批判を繰り返して来ましたが、この回顧録を読んでみて、初めて稀有な政治家であったように思います。ただ旧統一教会との問題を聞くことが出来なかったのは残念です。しかし昨年の1月には出版の準備が出来ていたことにもビックリです。

 しかし、この本のおかげで岸田総理がますます小さく見えて来ました。


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