■不信感いっぱいの政治情勢■

 「総理にされた男」という小説をご存知でしょうか?総理大臣にそっくりの顔をした売れない俳優がある日突然官房長官に拉致されて病床の総理の身代わりとなって大活躍する小説です。最近の岸田総理を見ていると中身が入れ替わったのではないかと思うほど豹変しています。本来岸田派は池田勇人元総理から連なるリベラル派でありハト派でした。それが昨年の秋からタカ派の安倍派をも上回るタカ派ぶりで、相次いで独善的に新たな政策を打ち出しています。昨年7月の参議院選挙前までは「私の特技は人の話を聞くこと」と言って、人の話は聞くが別にそれを考慮しないで優柔不断と言われていましたが、最近になって突然それまで言っていた「ボトムアップ」という言葉を忘れたかのように安倍元総理以上のトップダウンによる右傾化政策を進めています。もし岸田総理のこの豹変の根底にあるのが政権の延命と保身だとしたら日本はお先真っ暗です。

 何と言っても驚かされたのは12月の防衛3文書の見直しと原発政策の見直しです。政府は1月から7月の間に17回、防衛政策に関して専門家から非公開で意見を聞き、9月に有識者会議を設置しましたが、4回の開催だけで3文書の見直しを行いましたがあまりに拙速です。もちろん専門家や会議のメンバーは防衛積極論者ばかりです。

 岸田総理の防衛政策の見直しで、今年は防衛論議が活発になると思いますが、そもそも我が国の防衛の対象となるのはどこの国なのでしょうか?仮想敵国がいないのに防衛論議をするのもおかしな話です。もちろんこういう話になると、まず北朝鮮、次に中国という話が出て来ると思いますが、北朝鮮が直接的に日本を攻撃してくることがあるでしょうか?北朝鮮は度々ミサイルを発射していますが、日本を想定している物が一つでもあったでしょうか?北朝鮮がミサイル及び核開発を進めるのは独自国家の維持を目指しているのだと思います。現在北朝鮮が最も望んでいることは経済制裁の解除だと思いますが、これは北朝鮮が核開発を進めたために課せられたものです。これは鶏と卵の議論で北朝鮮が核開発を進めるから経済制裁を行う、経済制裁を解除させるために北朝鮮は核開発を進めるという話です。そもそも北朝鮮にとっての仮想敵国は米国と韓国だけで日本を仮想敵国とは考えていないと思います。ですから私は北朝鮮のミサイル攻撃に対する反撃能力は必要ないと思います。

 また、もし中国を仮想敵国と考えているのならば、いくら戦力を増強しても敵うわけがありません。中国は2020年に核弾頭を200発保有しており、毎年保有数を増加させています。日本が中国との紛争になった場合、核攻撃を行って来たら日本はひとたまりもありません。日本が敵基地攻撃能力を持っているからと言って中国が攻撃をためらうとは到底考えられません。それより中国にとっては1月10日に報道された米海兵隊の東南シナ海の中国の動きを牽制するための「離島即応部隊の創設」と当該部隊の沖縄への設置の方が遙かに脅威だと思います。

 そもそも安保3原則には「専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならない」と明記されているのに岸田総理は敵基地攻撃能力を充実させて世界第3位の軍事大国になろうとしています。なお、岸田政権は防衛力強化のために防衛予算を今後5年間で43兆円に増額すると表明しましたが、その財源として法人税や所得税の増税の話が出て来ています。今後大揉めすると思います。

 原発政策の突然の大転換にも驚かされました。自民党は3.11以来「可能な限り原発依存度を低減する」と言っていたはずですが、今回の原発政策の転換において原発の新増設まで言い出しました。これまでと180度とは言いませんが120度近い政策変更です。

 原発政策における岸田政権の詭弁も面白かったですね。60年と決められていた原発の稼働期間について点検期間の年数分を更に延長できるとしましたが、サッカーのロスタイムを同じ論理ですね。色々こじつける人がいるものです。やはり原発推進派の島田隆元経産事務次官を秘書官に起用したことが今回の流れを作ったのかも知れません。

 しかし岸田総理はこれだけの政策の大転換を7月の参議院選挙の時には一言も口にしていませんでした。今後しばらく国政選挙が無いことをうまく利用したつもりかも知れませんが、今月下旬から始まる通常国会が大荒れになること必至です。

 最後になりますが、岸田総理が年初に「異次元の少子化対策を行う」ことを表明しましたが、「何を今さら」という感じです。昨年の出生数が初の80万人割れの77万人ぐらいになるのではないかと大騒ぎしていますが、こんなことは何十年も前からわかっていたことです。少子化対策ほど事前に出来る対策はありません。平成の初めの人口統計を見れば現在の凡その出生数はわかっていたはずです。しかし効果的な対策は何一つ打たなかったために現在のような状況になりました。自民党が少子化担当大臣を設けたのは今から15年も前のことですが何も変わりませんでした。岸田総理にしても自分が政調会長の時には一言も少子化対策について触れていません。今になっていきなり人気取りのつもりかどうがわかりませんが「異次元の・・・」とか言われても誰も信用しないと思います。

 今更「異次元の」少子化対策があるとは思われません。本当は出産、子育て以上の抜本的な少子化対策が必要だと思います。我が国の50歳時の未婚率は男性28.25%、女性17.81%です。また先頃OECDが発表した女性が50歳時点で子供がいない「無子率」は27%で2位のフィンランドを5%以上引き離し、データのある17ヶ国のうちずば抜けて第1位です。私はこうなった主たる原因は長期に渡る経済の沈滞と政治不信による将来不安だと思います。

 少子化に歯止めがかけられなかった政治家の責任は重大です。国の経済成長率の基本は人口です。成長率の高い国で人口が減少している国はありません。人口がどんどん減りつつある中で徒に経済成長を求めてもうまく行くわけがありません。過去の無能無策のつけが今に回っています。

 今年も米国の有名な地政学の民間組織ユーラシアグループが「2023年世界の10大リスク」を発表しました。それによると第1位は「ならず者ロシア」で第2位は「絶対的権力者習近平」です。幸いと言えるかどうかわかりませんが「優柔不断なくせに独善的な岸田総理」はリスク10位までには入っていませんでした。




■ふるさと納税の是非 寄付金額1兆円超え■

 ふるさと納税が異常なスケールとなって様々な歪みが発生しています。2021年度のふるさと納税による寄付金の総額は8302億円でした。前年より1700億円もの増加です。返礼品も生活苦を反映するかのようにトイレットペーパーを始めとした生活必需品の割合が高くなって来たそうです。エネルギー価格の高騰や物価高で2022年度の家計はさらに苦しくなっていることが予想されますので今年度の寄付金総額は1兆円を超えると予想されます。右の表はふるさと納税で住民税が寄付控除されて減収になっている自治体のベスト10です。横浜市は地方交付税の交付団体なので寄付控除額は巨額ですが、地方交付税によって流出額は54億円に留まっています。

 ふるさと納税制度が始まって15年、ふるさと納税によって税収が減少した自治体は不満を訴えるばかりでなく自助努力によって少しでも寄付金を増やそうと努力を始めましたが、これほどの税収減を補填することは不可能です。

 一方寄付額が多かったのが北海道紋別市で153億円、2位は宮崎県都城市で146億円、3位が北海道根室市で146億円でした。驚くことに上位20自治体で全体の寄付額の2割を占めていることです。数年前に巨額の寄付で注目を集めた泉佐野市の498億円には及びませんが、各自治体にとっては税収を遥かに上回る金額となっています。

 寄付額トップの北海道紋別市の令和4年度の年間歳入予算は約300億円です。収入予算のうち繰入金と「その他」にふるさと納税の収入が含まれておりその額は今期は約100億円です。と言うことはふるさと納税の寄付金が無ければ200億円の予算しかない市に100億円の寄付金がなされたことになります。収入予算に計上されなかった寄付金は基金に組み入れられ翌年度以降使用されることになります。紋別市の人口は約2万人、わずか人口2万人の市に153億円の寄付、1人あたりにすれば76万5千円です。実は住民1人当たり寄付額がもっと多いのは寄付額第4位の白糠町です。釧路市の隣の白糠町は人口僅か7200人の町ですが、イクラを中心とした海産物の返礼品で、何と125億円もの寄付金を集めました。住民1人当たり何と171万円です。表現は悪いですが、ふるさと納税様様で笑いが止まらないことでしょう。

 そもそもふるさと納税制度は「生まれ育ったふるさとに貢献できる制度」「自分の意思で応援したい自治体を選ぶことが出来る制度」として創設された制度です。しかし上記のような実状をみると創設の趣旨とおよそかけ離れた動機によって寄付がなされ日本全国の自治体の予算に大きな格差が生じていると思います。沿海部の自治体と異なり魅力的な返礼品の少ない山間部の自治体との格差があまりに大き過ぎます。例えば紋別市の山間部側に位置する名寄市の2021年の寄付額は7300万円に過ぎません。この差を「自治体の努力の差」で片付けてしまうのはあまりに惨いと思います。

 ふるさと納税の人気上位は米を中心とする農産物、魚介類、果物、肉です。海に面しておらず、牧場もなく、米作中心の山間部の自治体では米か野菜しか返礼品がありません。それだけの理由で寄付金額が153億円と7300万円ではあんまりです。

 そろそろ自治体の公平性を考える時期に来ているのではないでしょうか?例えば寄付金額は税収の何割まで」とか「住民一人あたり幾らまで」とか寄付金額に何らかの規制が行われるべきではないでしょうか?あるいは各自治体が集めた寄付金を都道府県で一元管理して何らかの比率で分配してはどうでしょう?

 話は変わりますが、寄付金集めに関して努力を最も怠っているのが私が住む文京区です。掲示されている返礼品は僅か4品、寄付金額1万円に対するポストカード、寄付金額10万円で盃一つ、寄付金額30万円で扇子が2種類と全く返礼品の体をなしていません。やる気の無さが見え見えで本当に恥ずかしいです。東京ドームや後楽園遊園地があるのですから幾らでも魅力的な返礼品を設けられると思いますが発想が貧困なんでしょうね。こんなお粗末な職員のせいで区民サービスが低下することは許されません。




■死者数が表す第8波の第7波超え■

 全数把握が行われなくなってから感染者数で一喜一憂する意味は無くなっています。先月もお話したように感染者数は検査数によって正確性が変わって来ますが死亡者数は間違いない数字だと思います。その死者数が12月の下旬になって400人を超えて来ました。1月に入ってからは連日過去最多の死者数となっています。第7波では記録されなかった死者数です。10月から12月の3ヶ月に区切ってみると21年は744人だったのに対し、22年はなんと1万1853人と前年の16倍にも達しています。死者に占める高齢者の比率が圧倒的に高く、70代以上で92.4%を占めています。これを見ると「オミクロン株は重症化しにくい」という専門家の言葉がむなしく聞こえます。感染者数では第7波を下回っていますが、この死者数を見ると、もし全数把握していたら現在の感染者数は公表されている数の2倍以上になっているのではないかと思います。より一層の感染防止対策が必要です。

 また最近の傾向は西高東低です。11月ぐらいは北海道を筆頭に東高西低が目立ちましたが、全国的に気温が下がって来たら一気に関西圏、九州圏の各県が過去最多の感染者数を記録しています。

 それにしても驚かされるのは中国の感染拡大です。中国が12月8日にゼロコロナ政策をいきなり緩和して僅か1ヶ月で中国国民の半分が感染したと言われています。シノバックを初めとする中国のワクチンがいかに効果が無いかがはっきりしました。毎日火葬場に遺体が入りきらない状態なのに政府の公式発表では毎日の死者は殆どゼロです。「新型コロナウイルスで死亡した人だけを死者としてカウントするため、いくら死者が増えてもなかなかウイルスで死亡したことにはなりません。地方政府はある程度まともな発表をしているようですが、発表される数字を聞くと気が遠くなります。各省で数千万人単位の感染者が出ているようです。河南省政府は同省の感染率が89%に達したと発表しました。しかしいくらゼロコロナ政策を取りやめたと言ってもいきなり感染者がこんなに増えるものなのでしょうか?医療体制が脆弱とは言え、人と人との接触が少ない農村部でも都市部と同じような感染率となるのが驚きです。

 イタリアでは中国からの航空機の乗客の半数がコロナウイルスに感染していたそうです。中国からの入国者に対する対応は各国まちまちですが、我が国は珍しくいち早く、12月30日から中国からの入国者に対して検査を始めました。2020年の1月にはオリンピックの開催と習近平国家主席の来日を控えていたために水際対策が後手に回り多くの感染者を出してしまいましたが、今回は迅速な対応でした。3年前と同じ過ちをしないように春節の中国からの観光客を何とかストップさせなくてはなりません。

 1月8日以降は中国からの入国者には陰性証明が義務づけられましたが、きっと偽物の陰性証明が乱発されると思います。中国はこの取り扱いに反発して日本人に対するビザの発給をストップしました。相変わらず国際ルールを守れない国です。しかしタイのように中国の圧力に屈服することなくわが国はきちんとした水際対策を徹底して欲しいと思います。




■徒然思うこと■

・あっという間の円高・

 12月20日、日銀の黒田総裁がいきなり長期金利の変動幅を0.25%から0.5%に拡大すると発表しました。大規模緩和策の修正とみた投機筋が一斉に円買いに走り、わずか数時間で6円もの円高となりました。「相場の急激な変動は好ましくない、そのような時には躊躇なく為替介入を行う」と言っていた財務省が今回は全く動きませんでしたから、政府も財務省もわかっていた話のようです。元々長期金利の引き上げを抑制することに意固地な黒田総裁に対して11月に岸田総理が「あまりしゃべるな」と言ったという話も漏れ聞こえてきていましたので政権としての円安是正策だったのだと思います。その結果10月には151円台まで進んだ円安は1月3日には129円台まで円高となりました。

 しかしあれだけ円安になった時には多くのマスコミが「円安倒産続出」だとか「家計に悲劇が到来」と大騒ぎしていましたが、1ドル130円に戻っても戸惑うばかりで気の利いたコメントが出て来ません。適正な為替の水準を誰もわからないのだと思います。ただ、金利政策の転換で当面円高になることはあっても長期的には円安傾向が続くと思います。何しろ30年間全く成長せず、賃金も上がらず、1人あたりGDPは世界の中で毎年順位が下がっていく低成長国の貨幣の価値が国際的に上がって行くとは考えられません。

 それにしても日銀の黒田総裁は未だに往生際が悪く「金融緩和の修正ではない」と言い張っていますが、市場関係者は誰も信じていません。まもなく長期国債金利も0.5%を上回って行き、市場に後押しされる形で日銀は更に量的緩和の修正をすると思われますが、また黒田総裁が妙な事を言って市場を混乱させるようなことがあれば、4月までの任期を待たずに早めに交代という話も出てくるかも知れません。

・3年ぶりの海外旅行・

 正月明けに3年ぶりの海外旅行に行って来ました。4泊5日のグアム旅行でしたが、まだまだアフターコロナには程遠いと感じました。まず、空港がガラガラです。まだまだ便数が少ないせいか、どこの航空会社のチェックインカウンターも人がまばらです。年末の福岡空港ではセキュリティチェックに長蛇の列が出来ており、航空会社が「早めにお出かけ下さい」と言っていましたので久しぶりに2時間以上前に空港に着くように行ってみましたが1時間半も前にイミグレを通過してしまいました。

 航空会社のラウンジも殆ど開いていませんし、閉まっている免税店も沢山ありました。右の写真はイミグレを出たところのゲートまでの通路の写真ですが、殆ど人を見かけません。

 機内も後部はガラガラでした。年末のニュースで多くの人が海外旅行に行き始めたと報じていましたが、あれはほんの一時の話だったんですね。

 グアム島も悲惨な状況でプールもビーチも閑散としています。街をショッピングしている人もまばらです。と言うよりも多くの店が営業していません。免税店のギャレリアも営業は午後1時からです。人気のパンケーキ店も午後2時には閉店してしまいます。

 街で目立つのは韓国語の看板です。コロナ騒ぎの中グアムの観光客の中心は韓国の人にとって代わられたようです。ホテルのレストランでも英語と韓国語で書かれたメニューしか出て来ません。私は大型ホテルに泊まりましたが、休んでいるレストランもありましたし、クラブラウンジも1日に2時間しか営業していません。スパも休業中で外から呼ばなくてはなりません。

 ハワイはだいぶ観光客が戻っていると聞きますがグアムはまだどころか、もしかしたらもう戻らないかも知れません。

最後になりましたが、本年もよろしくお願いいたします。




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