■大荒れの世界の市場■

 世界の株式市場が乱高下しています。原因は米国の金利政策です。5月4日米国FRBは0.5%の金利引き上げを行いましたが、事前に0.75%引き上げの予想もあったのでNY市場は高騰しましたが、翌日になったら利上げによる金融引き締めを嫌気して暴落しました。わが国株式市場もそれに追随する形で株安が続いています。9日には中国経済の減速懸念から暴落して年初来安値を更新しました。

 今回の下落は株式だけでなく、これまで高騰を続けていた金や原油を始めとした商品市場でも下落が続いています。特に注目すべきは暗号資産ビットコインの暴落です。昨年11月には6万9千ドルの高値をつけましたが、10日には3万ドルを下回り、半年で半分以下になりました。投資家心理が悪化して全ての資産の現金化が始まっているのかも知れません。暴落に要注意です。

 一方円安が止まりません。根底にあるのは日米の金利差ですが、それに加えて資源高、食料品を始めとする輸入品の価格の高騰、中国のゼロコロナ政策による景気の悪化等円高に向かう要素は一つもありません。しかも為替政策のご本尊の日銀の黒田総裁は「基本的には円安は日本経済にプラス《とお経のように唱え続け、国債の指し値オペを継続し、金利上昇を抑え込んでいます。これに関しては市場の理解を全く得られていませんが、取り立てて説明する気も無いようです。この円安は米国が「これ以上の円安ドル高は許容出来ない《と判断するまで続くと思います。

 確かにこれまでは「円安は日本にとってプラス《だったと思いますが、それは日本が輸出一辺倒の企業に支えられていた時代です。現在は輸出企業においても多くの部品については海外から輸入していますし、現地生産も進んで、多くの企業で為替相場がイーブンに働くような経済行動をとっていて、円安が一方的に日本にとって有利とはいえない状況です。逆に原材料や部品を輸入に頼る中小企業にとっては円安はデメリット以外の何物でもありません。

 これまで「為替介入《と言えば円高時にしか聞かれなかった言葉ですが、今後は円安時にも使われるようになるかも知れません。但し世界的に市場に対する政府の介入が嫌がられる傾向にあるのでなかなか踏み切れないと思います。そうなると市場の動きに任せることになりますが、その場合には1ドル135円までは既定路線で、一時的には140円まで行くのではないかという意見が多いようです。但し相場というのは予想よりもオーバーシュートしますので、その時には1ドル150円まで行くかも知れません。そうなった場合の黒田総裁の顔が見ものです。

   一方日本企業は今回の円安をそれほど重要視していないように見えます。日銀の4月1日に発表した短観では、企業が想定する2022年度の為替レートは1ドル111円93銭でした。この当時の為替レートは1ドル120円台の半ばでしたが、企業は想定レートを大きく修正することはありませんでした。今回2021年度決算を終えて、新たに2022年度の想定レートを多くの企業が開示しています。5月11日付の日経新聞によると右図のようになっています。4月1日のものよりはだいぶ下がりましたが、現状の130円前後と想定した企業は殆どありませんでした。最も多いのは116円から120円です。4社に1社は円高に戻るとして110円から115円としています。現状より円安と想定する企業は全くありませんでした。円安がプラスになる企業が余裕を見て現時点より円高水準を想定するのはわかりますが、円安が業績にマイナスになる企業はもう少し保守的に見積もっておくべきかと思います。また輸出企業がこの円安を黙って見ているとは思えません。想定レートはこのように公表しておいて、実は多くの企業が現水準で巨額の為替予約をしていると思われます。

 しかし物価問題を抱える岸田政権が何故この日銀の為替政策を問題にしないのか理解出来ません。円安を抑制しろとは言いませんが、長期金利を下に押さえ込むという市場に逆らった動きは止めるべきだと思います。




■ロシアの核使用が心配です■

 ロシアのウクライナ侵攻の長期化で高笑いしているのは米国及びヨーロッパ諸国の軍需産業です。東欧諸国は第2のウクライナに備えて軍備の強化を進めていますし、軍備を増強しているドイツにしても、その半分は米国製と言われています。軍需産業は笑いが止まりません。米国もウクライナの軍事支援で相当額の支出を余儀なくされましたが軍需産業の大儲けで元は取れると思います。

 これまで米国だけでもウクライナに対して38億ドル、その他のNATO諸国の支援を合わせると50億ドル以上の軍事支援が行われた、あるいは行われつつあります。これはウクライナの国防費の8割近い金額で、その後も増加の一途です。今後も米国とNATO諸国がウクライナに対する支援を続ければ過去に例を見ない大国同士の近代戦になると思います。

 その上各国首脳が相次いでウクライナを訪問し永続的な支援を約束しています。調子に乗ったゼレンスキー大統領は「この戦争はクリミア半島を奪還するまで止めない《と発言しています。ドンバスからロシア軍を撤退させるだけでなく2014年に併合されてその後8年間もロシア領として認知されて来たクリミアまで取り返すというのはさすがに無理があると思います。また、戦争が終結した時にはウクライナ側はロシアに対して賠償を要求すると思いますが、侵攻から2ヶ月でウクライナ経済の搊失は5649億ドル、およそ73兆円と言われています、その後もロシアは侵略を続けていますからおそらく搊失は100兆円に上ると見られます。ウクライナ側としてはロシアが根拠も無く「ネオナチ《と言いがかりをつけて侵攻してきたのですから全額ロシアに賠償を求めるばかりか人的補償も求めると思います。その場合には請求額は1兆ドルを遙かに超えるでしょうがGDPが1兆7700億ドルのロシアは到底支払うことは出来ません。

 私はこの戦争の勝敗は決まっていると思います。今後米国を始めNATO諸国の軍事支援が継続的に行われる一方、ロシアに対する経済制裁もますます強まって行けば、ロシアはそう遠くない時期にウクライナからの撤退を余儀なくされると思います。今後何年もウクライナ侵攻を続けられるほどの体力はロシアにはありません。欧米諸国が禁輸を決めたロシア原油をインドや中国が買い求めたとしてもそれだけでロシア経済が維持できるわけではありません。ロシアは国防費だけは610億ドルと世界第4位の軍事大国ですが、そのGDPはと言えばNATO諸国全体の20分の1、米国の10分の1に過ぎません。

 また、今年の1月から3月の間に388万人もの人がロシアから出国したと言われています。全員がロシアを見限ったわけではありませんが、かなりの数のインテリ層がロシアから出国していて、これによる経済の弱体化も進みます。戦争の行く末は明らかだと思いますが、ロシアの栄光を夢見るプーチン大統領は決して諦めることはないと思います。例え今回ウクライナに侵攻したロシア軍全軍がウクライナから撤退することになったとしてもクリミア半島からの撤退には絶対同意しないと思います。上述の賠償金を支払う気も絶対無いでしょうから、西側各国があくまでロシアに譲歩を迫ったらロシアは核攻撃に走ると思います。その矛先は米国の尻馬に乗って前のめりにロシア制裁に踏み込んだ日本にも向かう危険性もあると思います。

 軍事支援と経済制裁では核戦争は止められません。そろそろ米国を始めNATO諸国の指導部はこの騒乱の落としどころをゼレンスキー大統領と話し始める必要があると思います。ゼレンスキー大統領としては国土を荒廃化され暴虐の限りを尽くされて怒り心頭でしょうから、やたらなことでは話し合いに応じないでしょうが、そこを説得しないと双方にとって上幸なことになると思います。

 もし、ロシアが核を使用するようなことになったら、その責任の一端は米国にあります。これまでロシアは何度も米国及びNATOに対して東欧をNATO化しないように主張してきました。フランスやドイツはロシアに配慮して東欧のNATO化については及び腰でしたが、米国はヨーロッパのNATO化を進めロシアを刺激続けました。このことが今回のロシアのウクライナ侵攻の大きな原因になったと思います。プーチン大統領は何の理由も無しにウクライナに侵攻したわけではありません。そのことを理解しなければ和平交渉が進むことはありません。




■感染拡大■

 GWの人流増加に伴い感染者数が再び増加して来ました。特に沖縄の感染者数の増加が著しく心配です。GW期間中の5月7日から急激に感染者数が増加したことから、5月3日からの3連休の人流増加が影響した可能性が大ですが、その後も感染者数の増加が続言えいます。これは第7波ではなく、第6波が終わっていなかったのです。

 政府は岸田総理の外遊を経て水際対策を緩和しようとしています。その内容は、これまで一律に制限していた観光客の新規入国を認める、入国者の上限数を1日1万人から2万人に引き上げる、これまで入国者全員に義務付けていたウィルス検査を緩和する等ですが、世論調査でも「水際対策を緩和すべき《とする意見が多くなって来ました。そこへ感染者数の反転増加では政府や業界の目論見が一気に崩れかねません。最近感染者数が沈静化して来たとは言え、その絶対数は1週間平均で3万人を超えるレベルで第5波のピークを遥かに上回っています。

 それでも人々が水際対策の緩和に理解を示すのは、私たちの心の中に新型コロナウィルスに感染することに対する慣れが生じているからだと思います。「誰それが感染したそうだよ《と言われても今では「ああ、そう《で済んでしまいます。それは無症状の感染者の割合が高いオミクロン株の流行によるせいだと思います。しかしそうは言っても今現在30万人以上の人が入院治療を要する状態であることも忘れてはいけません。そのような中でもより規制緩和が進められようとしているのは経済の常態化を目指していること以外の何物でもありません。水際対策の緩和によって国内感染者が急増したら、それは政府の責任です。入国者の上限数を引き上げることは問題無いと思いますが、ウィルス検査の緩和については到底紊得出来ません。これだけ検査の態勢が整って来たのですから、入国者を増やしても全員検査を徹底すれば良いのだと思います。

 ところでワクチンの3回目接種が一向に進みません。ワクチン接種率は5割を超えたあたりで足踏みしています。5月10日現在国民全体で見た接種率は約55%です。これを実際の人数で表すと6900万人となりますが、これには高齢者のワクチン接種済者3137万人が含まれています。となると高齢者以外で3回目のワクチン接種済み者は3762万人ということになります。その数を国民1億2665万人から高齢者3577万人を引いた9千88万人で割ると約41%となります。尤も高齢者を除いた日本国民の数には中学生以下の1533万人も含まれていますから、これを控除すると高齢者以外のワクチン接種対象者の数は7555万人となり、このうち接種済み者は3762万人ですから、その割合はちょうど50%となります。数字の遊びのようになってしまいましたが、要するに高齢者以外の感染の可能性の高い若者や中高年における接種率は未だ半分に過ぎません。これではまだ安心して世の中を歩くことは出来ません。最近は3回目の接種を訴えるメディアや政治家の声が少なくなって来たと思います。官房長官がワクチン担当大臣を兼務していること自体が政府のワクチン軽視の表れです。




■タワマン節税に最高裁判決■

 4月19日最高裁が画期的?な判決を下しました。これは俗に「タワマン節税の是非《として以前から注目されていた裁判でしたが、大方の予想を裏切って最高裁はタワマンの相続税評価について評価通達の原則的評価である路線価による評価を退けて「この通達の定めによって評価することが著しく上適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する《という例外規定を適用した国税側の勝訴としました。

 今回の裁判の概略ですが、具体的にはこの紊税者は相続発生の3年5ヶ月前に杉並区のマンションを8億3700万円で、2年6ヶ月前に川崎市内のマンションを5億5000万円で購入しました。相続が発生した2012年に相続人は路線価に基づき2棟合計で3億3千万円で評価して申告しました。被相続人は相続発生時には6億円の財産を所有していましたが、購入時に10億5500万円の借り入れを行って当該物件は購入されていたので実際には相続財産は基礎控除以下となり相続税はかかりませんでした。


 これに対して課税庁はマンションの路線価が実勢価格と大きく乖離しているとして上動産価格を12億7300万円と評価して加算税を含めて3億3千万円を追徴課税しました。この課税庁の例外規定の適用が今後どれほど普遍的な扱いになるかどうかがポイントです。

 私も当初、この判決を見た時には課税庁が決めた評価のルール、しかも通達というのは法律ではなく、税務職員が守るべきルールですから、それを破ってまで紊税者に課税するというのは自分で自分の首を絞めるような行為だと思いました。しかし上記の税務専門誌の説明を見てみると「これは裁判所がこう判断してもしょうがないな《と思えるようになりました。

 そもそも今回の被相続人の行為には経済的合理性が感じられません。わざわざ高齢の被相続人が借り入れまでして都内と川崎のマンションを購入しなければならなかったのか説明がつきません。しかも川崎のマンションは相続発生後9ヶ月で売却されています。まさに節税効果だけを目的に購入されたことは明らかです。上述のように被相続人はこのマンション購入時には相続税評価額6億円の財産を所有していました。この被相続人の財産に対する相続税が節税行為によって0円になってしまうことに紊得する人はいないと思います。一言でいえば「やり過ぎ《たのです。

 それではどのようなケースの場合に「やり過ぎ《と評価されるでしょう。今回の判決を見て、タワマンにお住まいの方が「私の自宅も相続が発生した時には時価で評価されてしまうのか?《という心配は無用だと思います。自宅が時価より低く相続評価されて結果的に節税となっても何の問題は無いと思います。ちょっと範囲を広げて、子供の住むマンションを購入して相続時に路線価によって評価することも問題無いと思います。課税庁は、この被相続人の行為を著しい「租税回避行為《と考え今回の措置が取られたのだと思います。

 今回の最高裁の判決の背景にはマンション、特にタワーマンションの時価と相続税評価額の乖離が大きいことがあります。マンションの評価は画一的です。以前にもお話しましたがマンションの相続税の評価においては同一マンション内においては床面積が同じなら相続税評価額も同じになります。北向きの低層階の部屋も南向きの高層階の部屋も同じ評価になります。時価で言えば5割近く異なるケースもあるかと思いますが、法律的には評価額は同額です。と言うことは同一マンション内の高額な部屋ほど時価と相続税評価額の乖離が大きくなり節税効果も大きくなります。尤も平成29年1月以後に建築された高さが60mを超える高層マンションについては平成29年改正で建物の固定資産税評価額、すなわち相続税評価額にについては補正されることになりました。それにしてもマンション、特にタワーマンションの時価と相続税評価額の乖離は大きいですから、相続税の節税を兼ねて投資としてタワーマンションを購入する動きは続くと思います。

 今回の案件は北海道の人がわざわざ借り入れまでして東京の高層マンションを購入したと言うことが裁判官の印象を非常に悪くしたと思われます。しかもそうすることによって相続税を1円も払わないという行為は「やり過ぎ《以外の何ものでもありません。きっと筋の悪いアドバイザーがいたのだと思います。金額、購入時期、購入スキーム等に無理が無ければ今後も問題になる可能性は低いと思います。

 但し、タワマンの購入という行為には何も違法性はありませんが、購入したマンションを相続税評価額で贈与するという行為は相続と異なり積極的な節税行為と解釈される危険性がありますから注意が必要です。特に今回のケースのように借り入れまでしてマンションを購入して、後日その部屋を親族に贈与して本人には返済すべき借入金のみが残るというのは最も課税庁が嫌う行為だと思います。




■徒然思うこと■

・れいわ新選組の山本太郎代表の暴挙・

 れいわ新選組の山本太郎代表が4月15日衆議院議員を辞職して夏の参議院議員選挙に立候補することを表明しました。山本太郎氏は比例東京ブロックで当選した衆議院議員ですから、山本太郎氏の辞職によって次点のれいわ新選組の候補が繰り上がり当選します。山本太郎氏は参議院選挙で自分の票を充てにして比例で議席を獲得しようとしています。

 これほど選挙制度を馬鹿にした話はありません。昨年の衆議院議員選挙で当選したばかりの議員が辞職する合理的理由は見当たりません。人気がある候補者が1人いれば、このような方法で2人分の議席を確保出来ます。また、もし山本太郎氏が夏の参議院選挙の比例で当選してすぐ辞任するとまた、繰り上がり当選が可能となります。これでは「一粒で二度美味しい《ではありませんが、1人の人気者候補が何人もの議員を生み出すことが出来てしまうことになります。このようなふざけたことを防ぐために、自己都合で国会議員を辞職したら何年間かは国政選挙には立候補出来ない仕組みを作り上げる必要があると思います。


前の月へ  次の月へ