■公的年金制度の財政検証■

 参議院選挙前に政府が出し渋っていた例年6月に発表される公的年金制度の財政検証が8月27日にやっと公表されました。予想通り5年前より悲観的な数字が並びます。経済成長率が最も高い予想でも将来の給付水準は現行より16%低下し、成長率が横ばいの場合には3割近く低下するという予想結果となりました。

 有識者によると全企業生産性上昇率がケース1から3になる確率は2割ということなので、所得代替率が50%を切る可能性は非常に高いと言えます。そもそも所得代替率が50%を上回れば良いという感じで議論が進んでいますが、現在所得代替率は61.7%あるのですから、これが50%に下がるということは現在より年金の給付水準が2割下がるということです。妙な理屈に踊らされてはいけません。


 これだけ悲惨な状況を克服するために幾つかのメニューも提示されています。効果の大きいのは厚生年金の適用を拡大して加入者を増やすものです。その中でも月収5万8千円以上の全雇用者に適用を拡大すると加入者が一挙に1千万人以上増加し所得代替率を4%以上引き上げます。しかし月収5万8千円の人が毎月5千円の年金保険料を支払うとは到底思えません。そして最も効果の大きい改革メニューは年金の受給開始を75歳まで繰り下げることです。こうすると何と所得代替率が30%以上アップして万々歳ということになります。

 厚労省が考えているのは、現在徴収している年金保険料を何とか増額し、一方支払う年金を減額し、とりあえず危機的状況にある目の前の年金財政をこれ以上悪化させないことだけで、様々な対策の後始末については棚上げしているに過ぎません。上記の対策はとりあえず年金財源枯渇の先延ばしには有効ですが将来的な不安は大きく増すことになります。

 厚労省や政府は何とか国民の不安を抑えようとしていますが、将来の年金の給付水準が下がることは殆ど間違いなく、自助努力で老後の算段をするしかありません。本当ならば年金制度も任意加入制にすれば良いのですが、現役世代が年金受給者の年金を支えている現在の仕組みではそうすることも出来ません。

 不安感をより煽りたいならば財政検証よりも厚労省などが作成した「社会保障の将来見通し」と、以前にご紹介した河合雅司氏の「未来の年表」という本の方が私達の不安感をよりかき立ててくれます。

 「社会保障の将来見通し」によると今後40兆円の医療給付は2040年に70兆円となり、10兆円の介護給付費は25兆円となり、年金給付は57兆円から73兆円へと増加し、この3つの支出だけで168兆円となるそうです。そして「未来の年表」によると2026年には高齢者の5人に1人が認知症患者となり、その人数は730万人に上ります。こうなると認知症患者が街に溢れることになります。また2033年には3戸に1戸が空き家となり、2040年には全国の自治体の半数近くが消滅の危機を迎えます、と言った暗い話が満載です。

 「年金が多少減る」といったのんきな話ではありません。医療と介護の方が我々に取ってはより喫緊な課題です。しかし政府も役人もこの点に関しては手をつける気がありません。以前からあれほど「社会保障改革」が叫ばれても目先の票の減少に結びつく改革に政治家は手をつけませんし、提案しても取り上げられないことがわかっている官僚はそのような動きをすることはありません。僅かにチャンスと言えば2012年に当時の野田総理が社会保障改革を実行することを条件に衆議院の解散に応じた自民党の安倍総裁との会談での約束を安倍総理が守っていればここまで酷いことにはならなかったかも知れません。また安倍一強と言われる今の時代こそ社会保障改革に手をつけるべきですがそのような動きはありません。政治家にとって最も大事な票田である団塊の世代が70代を迎えた今、高齢者の社会保障制度に手をつけるわけがありません。ですから我が国の社会保障制度は悪い方向に向かうばかりです。

 このように幾らでも我が国の悲惨な未来に関する情報をお届けすることが出来ます。一つだけ光明があるとすれば自助努力による老後資金作りです。究極の老後対策は以前よりお話している「小規模企業共済」です。小規模企業共済のメリットは

 ①掛金が全額所得控除

 ②解約した時の共済金は一括ならば退職所得となるので退職所得控除が受けられ、分割ならば雑所得課税(一定の条件に達している場合)

 ③資金が必要な時は積み立てた掛金の範囲で貸し付けを受けることが可能

 というようにメリットだらけで「加入しない人の顔が見たい」制度なのですが、近年加入条件が厳しくなり、加入できる人が限られています。ですが、簡単に諦めるのではなく、何とか「小規模企業共済」に加入出来るように自分の働き方の仕組みを変えてでも加入を目指すべきです。給与所得しかないサラリーマンの場合には兼業の不動産所得では加入できないので難しいですが、不動産賃貸を法人組織化すれば可能性が生まれます。知り合いの会社の非常勤役員になって加入を目指すという途もあります。ありとあらゆる方法を講じて加入を目指して下さい。何と言っても掛金が全額所得控除ですから利回りは「所得税及び住民税率の合計」です。受け取る共済金には退職所得控除が適用され、年金で受け取る場合には公的年金控除が受けられます。これ以外に皆さんに自信を持ってお奨めできる対策はありません。



■嫌韓を煽るマスコミ、悪化するばかりの日韓関係■

 嫌韓を煽るマスコミが多くなりました。特に酷かったのは9月2日に発売された週刊ポストです。記事の見出しのトップが「韓国なんて要らない」です。サブタイトルが『「嫌韓」ではなく「断韓」、やっかいな隣人にサヨウナラ』と来ました。

 週刊ポストの発行元は小学館ですが、小学館では呉善花氏の「韓国を蝕む儒教の怨念」や「韓国反日フェイクの病理学」といった嫌韓の人が読んで喜びそうな本を立て続けに出版しています。明らかに出版社として嫌韓、反韓を煽っているように感じます。

 特に週刊ポストの「怒りを抑えられない韓国人という病理」という記事では、韓国人の半分以上が憤怒調節に困難を感じており、10人に1人は治療が必要だという大韓神経精神医学会のレポートを紹介して韓国人の精神構造を解説していますが、これは韓国から国家として名誉毀損だと訴えられてもしょうがないほどの記事だと思います。例えこのようなレポートが実在していたとしてもその内容がきちんと検証されたものとは限りませんし、わざわざ今のような状況下でこのような記事を出すという精神構造の方が問題だと思います。

 国と国との関係は「ウィンウィン」でなければならないのに、今の関係は両者にとってマイナスでしかありません。日本よりも韓国の方がトータル的にはダメージは大きいでしょうが、そんなことを喜んではいられません。日韓の軋轢によって様々な両国の不利益が具現化しています。特に我が国の観光業界に与える影響は甚大です。表沙汰にはなっていませんが、輸出規制品を輸出している会社でも大幅な売り上げ減に追い込まれているはずです。

 元はと言えば過去の政権が認めてきた日韓請求権協定を認めない徴用工の判決が出たことがことの始まりです。国家間の約束よりも自分達の我を通そうとする姿勢を韓国側が変えない限り事態の好転は望めません。と言って両国が今後これまでの主張を引っ込めるとは到底考えられません。特に文在寅大統領にとっては政権の存立基盤が掛かっていますから意地でも譲ることは出来ないでしょう。これ以上の両国の関係悪化を防ぐには民間の動きしかないかも知れません。

 ただ、今の日韓関係は文在寅が退任すれば元に戻るかというとそうとも言えないと思います。儒教に基づいた韓国人の思想は、約束よりも「絶対の正義」にあるようです。ですから文在寅大統領の「一度、合意をしたから過去が全て過ぎ去り、終わりになるというものではない」というような国家間では考えられないような発言が出て来るのだと思います。そうでなければ幾らなんでもこの発言に対して与党や政権内からも「大統領、それはおかしいですよ。そんなことを言ったら国家間の約束が成立しませんよ」という指摘が出て来そうなものですが、そのような動きはありません。多くの人がそのように考えている証だと思います。

  現に文在寅大統領は2015年に日韓で合意した「慰安婦問題に関する最終的かつ不可逆的な解決」によって設立された財団を勝手に解散してしまい、残額についても知らんふりです。国家間で決めた約束に基づいて設立した財団を相手国の了解も無く一方的に解散してしまうというのは文化的な国家では考えられません。

 ところで娘の不正入学など次々疑惑が出て来ることで「たまねぎ男」と揶揄されている次期法相候補のチョ・グク氏ですが、11時間にも及ぶ釈明会見を行いました。テレビで一部だけ見ましたが、もし今回の疑惑騒ぎを乗り切ったら間違いなく将来の有力な大統領候補でしょうね。話し方、所作、どれを見ても素晴らしく、そのクレバーさは現大統領とは比べものにならないと思います。もし彼が将来大統領になったら日本には太刀打ち出来る政治家はいないと思います。と言っていたら翌日の議会の聴聞の最中にチョ・グク氏の妻が娘の表彰状を偽造した罪で在宅起訴されました。時効直前ということで取り調べ無しの起訴という異例の展開となりましたが、この他にも様々な疑惑が次々と出て来て、流石にチョ・グク氏を法の番人たる法相に任命することは無理かと思われます。と言うよりも、本人が数々の疑惑に関して検察の強制捜査を受けているので自分から身を引くべきだと思います。と言っていたら文在寅大統領がチョ・グク氏を法相に任命してしまいました。任命しても任命しなくても大きな非難を受けるのならば非難を受けてでも検察改革を行うという強行突破に出ました。

 ところでこのようなチョ・グク氏の疑惑を追及しているのは文大統領が指名したユン・ソクヨル検事総長です。文大統領にすれば「飼い犬に手を噛まれた」という感じでしょうが、検察側がここまで時の政権に対してやるのは、現政権を見限って、政権が代わった時に過去の罪に問われないためにやっているのかも知れません。朴槿恵元大統領の意を受けて徴用工訴訟を引き延ばしていたとして時の大法院の院長が罪に問われました。今の検事総長は自分もそうなることを恐れているのかも知れませんね。



■徒然思うこと■

・上級国民/下級国民・

 8月29日の羽鳥慎一モーニングショーでもそれと似たような話が「玉川さんのそもそも総研」で持ち出されました。これはちょっと衝撃的な内容で、収入格差が平均寿命と密接に関係しているという話です。これによると東京都の平均収入の高い区と低い区の間で何と平均寿命が3歳も差があるという調査結果が出たということです。


 また所得が高い区と低い区で生活保護の受給率が3%以上の差があることも明らかにされました。これまで誰もが薄々感じてはいたことですが、データで見せられると愕然とします。

 確かに所得が低ければ医者に行くことを極力減らすと思いますので、病気が見つかった時には重篤な状態になっているケースが多いようです。

 また番組に出演した桜美林大学大学院の杉澤教授の話がまた衝撃的で、「貧しい人というのはなかなか意欲を持てない」といって「お金をあげたからといってその人達の意識が変わるわけではない」。また「子供が不健康な親をモデルにすると健康格差は親から子へ連鎖する」「親がきちんとした生活が出来ていない状態だと子供は親をモデルにしてしまい、世の中をきちんと生きていこうという意識が培われない」「そういう点で階層が低い人の場合にはずっと低いまま高齢者になってしまう」と貧しい人にとって是非聞いて欲しい話でしたがきっと皆さん見てないでしょうね。

 また橘玲氏の「上級国民/下級国民」という本が売れているようです。新聞でも大々的に広告が打たれています。そこで言われていることは「いったん下級国民に落ちてしまえば下級国民として老い、死んで行くしかない。幸福な人生を手に入れられるのは上級国民だけだ」と書かれていることの多くが真実だとしてもやはり口にしてはいけないことだと思います。この本を読んで満足するのは「上級国民」だけで、この本を読んで下級国民から抜け出そうと努力する人がどれだけいるでしょうか?そもそも生活に困窮している人達はこんな本を買う余裕も無いと思います。しかし小学館というのは、週刊ポストといい、この本といい、人心を不愉快にするような出版物ばかりを世に送り出す出版社ですね。精神構造がちょっとおかしいんじゃないでしょうか?

・東京パラリンピックチケット・

 東京パラリンピックのチケット申し込みをしました。一度はオリンピックスタジアムに入ってみたいと思い、陸上競技中心に申し込みをしました。ただ障害によるクラス分けが細かくて何を申し込んでよいのかよくわかりません。例えばこのクラス分けによって100メートル走は決勝が男女それぞれ5回もあります。走り幅跳びのようにパラリンピックの記録がオリンピックの記録を上回るようなことが起きて来るとパラリンピック競技のクラス分けの難しさを感じます。特に冬季オリンピックになると参加者も少ないために、競技によっては数人しか参加していない競技もあり、メダルの価値とは何なのか考えさせられてしまいます。将来的にこの辺りを考えて行かないと競技としての存続が難しくなるかも知れません。

・消費税税率アップ前のおさらい・

 消費税税率アップまで半月となりました。増税前に買っておいた方が良い物については先月お話しました。そろそろ高額家電の品不足が出て来ているようですからお急ぎ下さい。ディズニーランドの年間パスポートを購入される方もお急ぎ下さい。もし購入されるのなら2パーク年間パスポートの方が断然お得です。何が軽減税率の対象となるかどうかについては概ね理解されていると思いますので省略して、やはり理解すべきはポイント還元です。購入先、支払い手段、運営会社による有利不利です。

 まず中小店舗の利用で5%が還元されるので、これをうまく利用するとどんな物でも消費税としての負担は最高でも5%になるので、現行の8%より得になります。それに加えて食べ物をお店で食べずに持ち帰れば二重に得になって3%で済みます。なお、大企業の場合には対象となりません。

 対象となる中小事業者については右のマークがある事業者が対象となります。現時点で申請している事業者は58万店と全体の3割程度ですが、対象とならないと売り上げが減ってしまうので申請する事業者は続々と増えて来ると思います。

 と言っていたら牛丼の吉野家が「レジ回収作業が間に合わない」ということでポイント還元事業に参加しないことを表明しました。大手企業では初めての公表で、今後物議を醸すことになりそうです。

 現在各カード会社による還元キャンペーンの嵐が吹きまくっていますが、限度額は大したことはないのであまり踊らされないようにして下さい。

・ふるさと納税 総務省が泉佐野市に完敗・

 総務省からふるさと納税制度の対象から外されていた泉佐野市が「除外は無効」として争っていた問題で、総務省の第三者機関・国地方係争処理委員会が除外の内容を見直しするよう勧告することを決定しました。「返礼品は寄付額の3割以下の地場産品に限る」とした総務省の通知の拘束力の問題でしたが、第三者委員会は「従わなかったことを理由に不利益な扱いを決めたことは地方自治法に反する余地がある」として見直しを求めました。

 元々総務省の通知では地場産品の取り扱いが厳しく、地場産品がある自治体と無い自治体の不公平を生んでいました。その声を無視して役人目線で通知を見直さず、従わない自治体をふるさと納税の対象から除外するという強硬措置を執りましたがこれにストップが掛かったということです。退任直前の石田総務大臣の面目丸つぶれです。

 と言ってメチャクチャな返礼品のサービスに走って異常な金額の寄付金を集めた泉佐野市の行為は決して褒められるものではありません。泉佐野市の市長も泉佐野市があれだけの寄付金を集めたことによって税収減を被った都市部の自治体をどう思うかとの質問には沈黙を保っています。「自分さえ良ければ他所はどうでも良い」という態度は改める必要があります。泉佐野市は除外前の駆け込み対策を用いて十分な金額の寄付金を集めたのですから寄付金集めは暫く自粛した方が良いと思います。

・渋野日向子記念切手発・

 全英女子オープンで優勝した渋野日向子選手の記念切手が発売されることになり10日から受付が始まりました。私も早速申し込みました。




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