■東芝問題■

 今年も残すところあと20日あまりです。経済界の今年最大の不祥事は東芝事件ということになりました。社会全体に対する影響は杭工事データの偽装かも知れませんが、杭工事のように業界全体の問題になりつつある事象と一企業の問題とでは大きな違いがあります。

 そもそも東芝問題の「不適切会計」というよりも「粉飾決算」が発覚したのが今年の4月で当時の株価は500円近かったものが現在は300円割れで、時価総額で8千億円近くが吹っ飛んだ勘定になります。これまでに起こされた訴訟とは別に損失を被った株主からの損害賠償請求が相次ぎそうです。

 そして東芝事件がこれまでの粉飾事件と大きく異なるのは、次々と不祥事が出てくることです。これまで2千数百億円の追加損失を発表していましたが、これに加えて米国原発子会社で1千6百億円の減損が発生していたことを開示していなかったことが明らかになりました。また公平公正であるべき第三者委員会の報告書がこれほど非難された例はありません。「旧経営陣と監査法人に大甘な第三者委員会報告」とこき下ろされています。粉飾決算当時に役員であった室町現社長の責任も認定していません。例え室町社長が直接粉飾に手を染めていなかったにしても、粉飾決算を決議した役員会には出席していたわけですから、粉飾の事実に気がついていなかったようではあまりに頼りなく、とても社長を続けさせるわけには行きません。

 現在は東芝の旧役員だけでなく、監査法人にも責任の追及は及んでいます。監査を担当している新日本監査法人は金融庁からどのような処分が下されるのか息を潜めて見守っている状態です。何しろカネボウ事件の時には公認会計士が4人逮捕されています。新日本監査法人はオリンパスの不祥事でも業務改善命令を受けていますが、オリンパスの問題の責任はそもそも粉飾決算当時の監査を担当していたあずさ監査法人に基本的な責任があったので、両法人とも決定的な処分を受けなかったという事情がありました。しかし今回は長期間に渡って監査を行ってきた新日本監査法人の単独責任です。最悪のケースではカネボウ事件の中央青山監査法人のように業務停止命令を受けることも考えられます。その場合にはカネボウ事件の時と同じように一定期間監査が出来なくなるために日本経済全体が大混乱に陥ります。しかし新日本監査法人がどのような言い訳をするのかわかりませんが、今回のような不正経理が見抜けないようでは監査の意味が全くありません。何故このようなことが監査で表面化しなかったか調査を見守りたいと思います。

 ただ監査法人の処分を巡り日本経済新聞に不適切な表現がありました。それは「日本公認会計士協会が金融庁の動向を見ながら協会として戒告や除名などの処分を決める」という記事です。会計士協会が監督官庁の顔色を窺いながら会としての処分を決めるという、あまりに会としての自主性の無さが強調された記事です。公認会計士協会としては断固抗議すべきでしょう。

 ところで証券取引等監視委員会は12月7日、今回の会計不祥事に対して約74億円の課徴金を課すように金融庁に勧告しました。過去最高額の課徴金です。これに関して旧経営陣に対して3億円の損害賠償請求訴訟を起こしていた東芝は今回の課徴金の件を受けて追加請求をすることになったそうです。課徴金を課せられる原因となった不祥事の責任は旧経営陣にあるのですから74億円全額を旧経営陣に請求してもよさそうなものですが、そうはならないようです。と言うのは、旧経営陣は予算の達成を部下に強く求めはしたが「不適切会計を主導した」とは言えないからのようです。要するに「利益を増やせとは言ったが不正を命令したわけではない」という言い分のようです。となると実際に罪に問われるのは利益操作に手を染めた部下達ということになってしまいそうです。しかし不正をしなければ達成出来ないはずの目標達成を強要した経営陣の行為はやはり不正だと思います。

 しかし旧経営陣に車を提供していたり、損害賠償額を低額にしたりして、東芝という会社は旧経営陣の責任を本気で追及する気が感じません。本当にこの会社は腐りきってますね。



■今年中に出来ること(ふるさと納税を中心として)■

 いよいよ今年最後の月になりました。月並みですが孫に贈与をするとか、事業をやられている方は小規模企業共済か倒産防止共済に加入することによって納税の先延ばしあるいは軽減を図ることが出来ます。12月は節税のアクションで最も重要な月です。12月と1月の僅か二ヶ月で2年分の節税が出来るのですから。

 またふるさと納税の限度額も暦年で計算されますので、もしまだ寄付金の枠を残している方は有効にお遣いになることをお勧めします。寄付に対するお礼の品もどんどん充実して来ていて、「えっこんな物が!」というようなお礼の品も出て来ています。

 ふるさと納税に関してはまだご理解頂いていない方が多いようですが、制度の是非の議論を脇において考えると「やらない人の顔がみたい」という感じです。ある程度の所得がある方なら一生、米と野菜と肉を買わなくて済むのではないでしょうか?と思って計算をしてみました。

 例えば最も還元率の高い自治体では1万円の寄付で20キロのお米が貰えます。このような自治体の寄付の枠はすぐ一杯になってしまいますが、1万円の寄付でお礼の品として10キロのお米をくれる自治体は何百とあります。一家庭で年間消費するお米の量を計算してみると、1合150グラムとして、朝晩食べたとしても一日に通常5合もあれば足りると思います。そうすると1日に900グラム、1年に330キロ(凄い量ですね!)。それでも1年に33万円の寄付で1年間分のお米が貰えることになりました。しかし年間33万円の寄付限度額があるのは年収1500万円ぐらいの人ですね。こうやって計算してみると、ふるさと納税だけで米と肉と野菜を手に入れるには年収が3000万円ぐらいないと無理かも知れません。しかし日本人ってお米を沢山食べるんですね。計算してみて驚きました。 それと多額の寄付を行ったことによるお礼の品への課税を心配している方もいらっしゃいますが、もしそのような方はJTBが主催している「ふるぽ」すなわち寄付をポイントに交換して、好きな時にそのポイントをカタログの中から好きな商品やサービスに交換すれば良いと思います。そうすれば寄付した年にはポイントしか給付されませんから、お礼の品に課税しようと思っても不可能です。そして翌年あるいは翌々年にそのポイントが何らかの商品やサービスに交換された時に課税することなど不可能です。もし課税が心配な方は一度ポイントにしてから何を貰うかゆっくり考えたら良いと思います。

 また2016年度の与党税制大綱によると、来年度からは企業版ふるさと納税も始まり、現行の寄付金の損金算入と合計して、寄付額の6割の税負担が減ることになります。



■相場■

 最近最も大きく動いているのは原油相場です。6年数ヶ月ぶりの原油安です。NYの原油先物市場では1バレル37.5ドルとなり僅か1年半で三分の一になりました。最近行われたOPECの総会で減産の決議が行われなかったことで当分の間、需給が弱含みという観測で値下がりが大きくなりました。通常であれば資源価格が下落すれば先進国経済にとってはプラスとなるはずでした。しかしそれが急激に起こると色々な問題が出てきます。以前このメッセージでも書きましたが、急激な原油安は産油国の経済に打撃を与え、世界中にまき散らされたオイルマネーの回帰現象を引き起こします。特に資源に依存していた新興国経済にとっては深刻な打撃となっています。

 12月10日付けの日経新聞によると、サウジアラビア通貨庁が大株主に入っている日本の上場企業は9月末で30社と半年前に比べて半分になったそうです。時価総額では三分の一になってしまっているそうで、オイルマネーの引き上げの動きが顕著です。サウジのような大国はこれまで築き上げてきた資産を取り崩せばよいですが、体力の無い産油国は大変です。特に大変なのは資源大国であるロシアでしょう。

 現在の世界は何らかの形で世界中がリンクしていますから、世界のどこかで異常なことが起きると世界中に悪影響を及ぼします。例え小国と言えども一国が破綻すれば世界中に負の連鎖を引き起こします。NY株式市場も原油安を材料として下落を続けており、日本市場もNY安に連れ安しています。

 原油価格の下落に連鎖する形で貴金属をはじめとする商品市場も多くの品目で暴落が起きています。価格水準よりもその動きの激しさに注意が必要です。私は半年以上前から原油ETFを買い続けていますが損切りの連続です。最近もナンピン買いを続けていますが、このまま行くと債券ベアファンドと同じように、ことわざ通りの「ナンピンは素寒貧」になってしまいそうです。しかし「麦藁帽子は冬に買え」の格言を信じて原油相場の反騰に賭けたいと思います。



■徒然思うこと■

・とうとうリゾート施設まで

 「新語・流行語大賞」に選ばれた「爆買い」とインバウンドに明け暮れた2015年でしたが、観光や買い物だけでなく、とうとう日本のリゾートまで海外勢に買われることになってしまいました。これまでもニセコのリゾートマンションをオーストラリアのスキー客が購入しているという話がありましたが、今回はリゾートが丸々全部です。今回上海の豫園を経営するフォースングループが「星野リゾートトマム」(昔はアルファリゾートトマムと呼ばれていました)を180億円で米国の投資会社から譲渡を受けました。運営はこれまでと同じく星野リゾートが行うということでテイストは変わらないのかも知れませんが、中国企業が所有する初めての日本のリゾートということで今後の宿泊客の動きが注目されます。果たして中国人だらけのリゾートに日本人は行くでしょうか?

 と言っていたら中国富豪ランキング19位のフォースングループの郭代表が連絡が取れなくなっているそうです。当局の取り調べを受けているのかも知れません。本当に中国という国は、いつ何があってもおかしくありません。

・マイナンバー

 12月になって平成28年分の扶養控除等申告書の提出時期になって俄にマイナンバー収集作業が具体化して来ました。まだ保管体制が出来ていないためぎりぎりまで収集を先送りしている事業者の方も多いようです。管理体制が出来ていないうちにマイナンバーの収集を始めるのは危険です。

 今後はいったいどれだけの人が「個人番号カード」を申請するかに注目です。もし予想外の人数が申請したらまた、通知カードの二の舞です。何しろ東京駅100周年記念Suicaもまだ私の手許に届かないのですから。

 ところで住基カードを持っている人は「個人番号カード」の申請にあたり住基カードを返却することが求められます。紛失した人は「紛失届」を提出すればよいのかと思いましたが、とんでもありません。警察に「遺失物届」を提出して、その際の受理番号がわからないといけないそうです。今後は警察の窓口も関係ないことで混雑しそうです。住基カードは666万枚発行されているそうですが、いったい何人がきちんと保管しているでしょう?

 新聞等によると、人口24万人の草加市が1万9千枚の発行を想定しているのに対し、人口全国トップの横浜市は370万人の人口に対し43万枚を想定していて、発行枚数の予想は市町村によってまちまちです。およそ平均10%ぐらいで、当初の予定を大幅に上回りそうです。単純に人口比では計れませんが、1億2700万人の人口に対して1200万人の個人番号カードの申請があったら、5600万通の通知カードの2割以上の申請が行われることになり、再び大混乱必至です。

 しかし内閣官房のマイナンバーのサイトを見ていると、毎日のように新しいニュースが公表されています。また「こうなるそうだ」等という情報まで含めると私達専門家は気の休まる暇がありません。Q&Aも逐次追加されていてサイトから目を離せません。

・杭打ち偽装

 国土交通省が杭工事のデータ偽装問題を受けて、データ偽装が判明した旭化成建材のマンションの売買に関して仲介業者に偽装の事実を説明することを義務づけました。通常不動産売買時に行われる「重要事項説明」の一つの項目として織り込むようです。この動きは他の偽装が行われたマンションやこれまで全く関係ないと思われていたマンションの売買にまで波及する可能性があります。業界では杭工事のデータをかなり長期間遡って調査しなければなりませんから大変です。倒産している業者も多いでしょうから混乱が起きると思います。

 そう言っていたら、横浜市都筑区のマンション建築に関して、それ以前の建物では18メートルの杭が使われていたのに、それより短い杭を使うことを建築会社の三井住友建設が指示していたことが明らかになりました。これまで「旭化成建材に騙された」と被害者面していた三井住友建設が実は今回の事件の張本人である可能性が出て来ました。

 ところで私が住んでいるマンションは旭化成が事業主でしたが、杭打ち業者は旭化成建材ではありませんでした。子会社に外注するとは限らないんですね。

・ドーピング問題

 国土交通省が杭工事のデータ偽装問題を受けて、データ偽装が判明した旭化成建材のマンションの売買に関して仲介業者に偽装の事実を説明することを義務づけました。通常不動産売買時に行われる「重要事項説明」の一つの項目として織り込むようです。この動きは他の偽装が行われたマンションやこれまで全く関係ないと思われていたマンションの売買にまで波及する可能性があります。業界では杭工事のデータをかなり長期間遡って調査しなければなりませんから大変です。倒産している業者も多いでしょうから混乱が起きると思います。

 ロシア陸上界の組織的なドーピング問題に関してロシアが火消しに躍起です。スポーツ相が「ロシアだけの問題ではない」とかプーチン大統領が「ドーピングに無縁な選手に違反を犯した選手の責任を押しつけるべきではない」とか、何とかリオデジャネイロオリンピック出場にこぎつけたいとの思いがひしひしと伝わって来ます。しかし反省、謝罪の言葉は一つも聞こえて来ません。普通なら第三者委員会を立ち上げて真相究明を図るものですが、そんな動きは全く伝わって来ません。違反の責任に関して全く無視しています。

 国の体質と言って済ませるにはあまりに大きな問題です。まず違法に勝ち取ったメダルの返上から始めるべきではないでしょうか?しかしこのまま行くとロシアや東欧諸国の陸上競技選手が来年のリオデジャネイロオリンピックに参加出来なくなってしまいます。



■エンターテイメント■

 今年も京都に紅葉を見に行って来ました。見頃より1週間早かった感じです。しかし京都では誰もが「今年の紅葉は綺麗じゃない」と言っています。どうも夏に雨が少なかったせいだそうです。まだ葉が緑の木の隣では落葉が始まっていました。紅葉がてんでんばらばらで見頃の木が見当たりません。

 そういえば絵画館前の銀杏並木の黄葉も今年は冴えませんでした。天候異変の影響がこんなところにも現れているのかも知れません。

〈真如堂〉

〈天龍寺〉

〈金戒光明寺〉

 ドラマは「下町ロケット」と「あさが来た」が絶好調ですね。「下町ロケット」は相変わらずの池井戸潤流の話作りですから、時間のない方はシリーズの前半は見る必要がありません。今回も前半が5話、後半が「下町ロケット2」の5話という構成になっていますから、前半は4話と5話、後半は9話と10話を見れば効率よく気分良く見ることが出来ます。「あさが来た」は毎週見所のシーンが多いので皆さん楽しめていると思います。

 配役に関する文句をまた言わせもらうと、「ルーズヴェルト・ゲーム」で悪役の競争会社の社長を演じていた立川談春が「下町ロケット」では熱血経理部長を演じているのが今ひとつピンと来ません。もし原作を読んでいなかったら、あるいは池井戸潤の小説の癖を知らなかったら「最後の最後で裏切るんじゃないか?」と別の意味の期待も出来るのですが。

 映画では「劇場版MOZU」はドンパチのオンパレードです。日本でもマニラのスラム街でも撃ちまくり、切りまくりだらけです。血に弱い方は気をつけた方が良いと思います。

 一番印象的なのは松坂桃李です。あまり悪役にはならない松坂桃李ですが、今回は血まみれ、血だらけでもの凄いです。 「杉原千畝」は予想通りの内容です。苦悩する外交官、情に厚い外交官、ただそれだけです。予想される以上のものを期待されると裏切られます。

 もうひとつは「海難1890」。これも一大スペクタクルを期待すると裏切られます。スペクタクルシーンは僅かで、それもかなり小ぶりです。見所は和歌山の小さな漁村の親切心です。何の見返りを求めない、ただただ人を思いやる心、これだけがこの映画の見所です。

 と言うことで、「杉原千畝」と「海難1890」は現在いずれも映画ランキングの10位以内にランクインしていますが、わざわざ見に行くほどでもない映画だと私は思います。



□ 冬期休業のお知らせ □

12月29日(火)~1月4日(月)は年末年始休業とさせていただきます。
本年も有り難うございました。皆様よいお年をお迎え下さい。




前の月へ  次の月へ