■安保法制■

 結局強行採決されてしまいましたが、衆議院では最後まで議論が噛み合わない安保法制でした。参議院でも論戦が始まり、論点が少し絞られて来ました。まず違憲論争ですが、政府側としては違憲でない根拠としては「違憲か違憲でないかを判断するのは最高裁で、最高裁の判決の中で自衛権を認めた1959年の砂川事件判決がある」、これ1点です。それ以外に違憲でないということに関して論拠はありません。一方違憲派は政府の見解に対して、「砂川判決は憲法9条に自衛隊が違反しているかどうかを判断したのであって自衛権は論点になっていない」としています。しかし砂川事件判決当時には1952年に発効した旧安保条約があり、その前文には「日米両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し」とあります。この文章によると旧安保条約は日本の個別自衛権と集団的自衛権を認めていたことになります。そして砂川事件判決は我が国の自衛権を認めていますが、その前提として国連憲章がありますので、砂川事件判決は我が国の個別的自衛権と集団的自衛権の両方を認めていたとも解釈出来るわけです。

 週刊新潮の7月30日号が安保法制合憲論者である3人の憲法学者の座談会を掲載していて大変面白かったです。3人のうち2人は菅官房長官が「安保法制が違憲ではないという憲法学者も沢山いる」と言って実名を挙げられた方です。この座談会では上記のようなことが話し合われています。出来れば憲法学者の公開討論会でこの点をはっきりさせてもらうと国民の理解も深まると思います。

 ただ、歴代内閣ばかりか今回の安保法制の与党の実質的責任者の高村副総裁も以前「我が国が国際法上このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上当然であり、日米安保条約前文も、日米両国がこのような集団的自衛権の固有の権利を有していることを確認しているところであります。しかしながら、憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することはその範囲を超えるものであって、我が国の憲法上許されないと考えております」と言っていました。すなわち集団的自衛権はあるけれど、それを行使することは憲法上許されないと発言しているわけです。この話はどうなったのでしょうか?

 一方実体的な議論として、政府は様々な事例を出して個別的自衛権だけでは我が国を守れないとするのに対し、野党は個別的自衛権だけで十分としています。また政権側が示す集団的自衛権の適用ケースが時の政権の判断に委ねられており、これも国民が大きく不安に感じる点です。それに加えてお馬鹿な防衛大臣は「手榴弾は消耗品」だとか「同盟国の核ミサイルの輸送も法案は禁じていない」と言いだしました。いくら「しかしそんなことはあり得ない」と言われてもこの発言は聞き捨てなりません。その割にはその後この問題が大きく取り上げられることはありません。野党は閣僚の失言ともいえる発言は幾つも引き出しますが、それだけで終わってしまって追求が甘いと思います。

 このような中で安倍政権に対する不支持率が支持率を大きく上回っています。参議院でどのような展開になるかわかりませんが、仮に参議院で可決されなかった場合に与党が強行に60日ルールを適用して再可決したら安倍政権はひっくり返るかも知れません。しかし法案成立後に安倍政権が崩壊しても意味はありません。後の政権がこの法案をひっくり返すとは到底思えません。と言うことは安倍総理に法案成立を諦めさせるほどの世論の盛り上がりが必要ということです。首相補佐官の暴言、失言も安倍総理の足は引っ張っても流れを変える状況までにはなりません。しかしこれでもし再議決されたら私達は後世の人々に「何であんな法案を通してしまったんだ」と言い続けられることになってしまうのでしょうね。

 ところで最近安倍総理が国会で「南シナ海での中国の脅威」を強調するようになりました。集団的自衛権の必要性の根拠には全くなっていませんし、9月の日中首脳会談の実現を模索している中で軽率な発言だと思います。



■読者を惑わす過激な雑誌の見出し■

 週刊エコノミストが7/21号で「円高が来る」と特集を組みました。表紙には「1ドル=102円も」とショッキングな見出しもありましたが、中身を見てみると様々な意見が掲載されています。タイトルは勇ましいですが、円安論者も多く、結局は「為替に関しては色々な意見がありますね」というような内容の記事でした。タイトルの割には中身はどうということもなく、まるで東京スポーツの見出しみたいです。

 一時は121円台に突っ込んだ為替相場ですが、ギリシャ問題が危機から遠ざかったら知らない間に124円台まで円安が進んでいます。しかし7月下旬になるとNY市場が続落していた最中に今度は上海株式市場が暴落して、世界的に株安となりました。これを受けるように為替も円高が進み一挙に122円台まで円高となりました。と言っていたら上海株式市場が下げ止まったとして再び124円台の円安です。さらに直近では米国の利上げが近づいたということで125円台もつけました。こういうときに誰が儲かっていると思いますか?それはFX業者です。FX業者は相場が膠着状態にならない限り相場が上に行っても下に行っても玉が動くので儲かります。株式市場でも株価が動かないと証券会社は商売になりません。昔は今と違って証券会社の主たる収益は株式の売買手数料でしたから、お客さんに頻繁に売買させました。ちょっとでも上がれば「儲かりましたから売りましょう」、ちょっとでも下がったら「損が大きくならないうちに損切りして別の銘柄に乗り換えましょう」等と言って売り買いを膨らませて手数料を稼ぎました。今から40年も前の時代に中堅の証券マンは月に300~400万円の手数料を上げていましたから、お客さんはずいぶん手数料を払っていたわけです。

 株式でも為替でも価格に動きがあれば常にビジネスチャンスが生まれます。但し不動産だけは価格上昇期にしかビジネスチャンスはありません。何故かと言えば、不動産は信用売りが出来ず、一物一価なので標準価格が定まりにくいからです。

 ところで商品市況がボロボロです。特に原油と金が下げ止まりません。原油は需給関係が緩んでいるのと中国経済の不安から下落を続けています。金も大需要家の中国の需要に不安があることと、ギリシャ危機が当面遠ざかったこと、そして来月には米国の利上げが予想されることから大きく下落しています。但し原油も金も採掘コストを価格が下回って来ているので、現在のような価格水準がいつまでも続くとは考えられません。私はぼちぼち原油を買い下がっています。



■ギリシャ問題■

 しかしギリシャのチプラス首相ってバカですね。6月末に突然国民投票などと言い出さずにそのままEU案を受け入れていれば今回のような強烈な緊縮策を受け入れなくても済んだはずなのに、わざわざ傷を広げてしまいました。しかも国民投票で「緊縮策はNO」という国民の意思を明確にさせた上でそれに反する緊縮策に同意しました。やっていることが支離滅裂ですね。そもそも今年の1月に就任したチプラス首相が人気取りのために反緊縮の大盤振る舞いをやったためにギリシャの財政は一気に悪化するとともにEU諸国の信頼を一気に失ってしまいました。

 それでも何とかソフトランディングを図ろうとするEU首脳は当てにならないギリシャの緊縮財政の法制化を条件に支援継続を決めてしまいました。しかし債務減免無しにギリシャが経済、財政的に存続していくことは不可能です。また数ヶ月もしないうちにギリシャ問題が世界経済を大きく揺さぶることになると思います。今後は債務減免に納得しないドイツがどのような動きに出るのか注目です。 そうした中で久しぶりに開場したギリシャの株式市場は20%以上の暴落状態です。殆どの大手銀行がストップ安の状態ですから、これらの株式が正常な取引に戻るまで株価の暴落は続くでしょう。

 今後はギリシャ救済に躍起になったフランスの財政がいつまで持つのかが焦点になります。フランスもギリシャと同じような問題を抱えています。日本人駐在員がフランスで5年以上年金保険料を支払えば60歳過ぎには毎月5万円以上の年金を受け取ることが出来ます。日本では25年も支払った国民年金の受給額が同じ程度です。フランスは移民が多くて国民の平均年令が低いからこんなことが出来るんでしょうが、いつまでもこんなことをやっていてはいずれギリシャのように破綻します。



■ふるさと納税改正の欠点■

 本年から「ふるさと納税ワンストップ制度」が創設されました。これはふるさと納税の便宜性を高めるための、給与所得者等の通常ならば確定申告をしなくてよい人のための制度です。この制度では5ヶ所の寄付先まで申告不要で、直接地方自治体に連絡が行き、住民税が軽減されます。手続き的には、寄付者が寄付先の自治体に寄付金の控除申請を寄付者に代わって行うことを要請し、要請を受けた自治体は控除に必要な事項を寄付者の個人住民税課税市区町村に対して通知します。そうすると寄付金に関わる所得税及び個人住民税の寄付金控除額の5分の2を都道府県民税から、5分の3を市町村民税から控除されます。これは5ヶ所に対する寄付まで適用されます。文字にすると面倒くさそうに思いますが簡単です。但し6ヶ所以上にふるさと納税をすると、この制度は適用されず確定申告が必要になります。

 この制度の問題点は所得税の寄付金控除額まで地方税から控除してしまうことです。本来国が負担すべき所得税の還元額を地方自治体が負担しなくてはなりません。このことはまだ大きく取り上げられていませんが、規模が拡大すれば大変なことになります。と思っていたら実はそうではないケースがあるんですね。それが自分の住む自治体に寄付するケースです。

 7月29日付けの日経新聞朝刊によると、「税収減は国税と県民税で補填される」とあり、自分が住む自治体に寄付すると1万円の寄付に対して1万円税収が減りますが、6160円を国と県から補助してもらえるので、返礼代がこの金額以下なら自治体が儲かることになります。要するに地方交付税法では自治体に対する寄付は税収の増加にならず、税収減に対しては補填されるのでこのようなことになると思います。細かい欠陥を突くとこのような話が出ますが、あまり目くじらを立てる必要は無いと思います。しかし得している人がいるのなら必ず損している人がいるはずです。得をしているのは寄付を受けている自治体、その自治体に返礼品を納品している業者、ふるさと納税をしている個人です。逆に損をしているのは自分の自治体以外に寄付をされてしまった自治体と国ということになります。また、ふるさと納税による寄付を受けていない自治体は間接的に地方交付税が削減されることになると思いますので、いずれは地方交付税法を含めた議論が起きることになると思います。

 なおこの「ワンストップ制度」は27年4月1日以降の寄付から適用されるので、今年の3月までにふるさと納税をした人は確定申告をすることになります。この「ワンストップ制度」は一見便利なように思いますが、積極的にふるさと納税をしようと考えている人には寄付先が5ヶ所では全然足りないでしょうから、確定申告を面倒臭がらずにあちこちに寄付して下さい。但し、ふるさと納税の寄付金控除のためだけに会計事務所に確定申告を依頼するのはやめて自分自身で確定申告をするようにしましょう。会計事務所に報酬を支払ったら得かどうかわからなくなってしまいます。




■徒然思うこと■

・東芝事件

 マスコミはいつまで東芝事件に関して「不適切会計」という言葉を使うんですかね?何故はっきり「粉飾決算」と報道しないのでしょう?僅か3日間で120億円の利益の積み増しなんて粉飾以外で出来るわけがありません。もしマスコミがCM大手の東芝に遠慮してこのような表現を使っていたとしたら問題です。さすがに第三者委員会報告が出た後は「不正会計」という表現にはなりましたが、まだ「粉飾決算」という表現を使いません。スポンサーに気を遣いすぎです。しかし東芝ほどのビッグカンパニーで社長が部下に「計上時期をずらすことを検討してくれないか」というメールを発信するってちょっと考えられません。企業規模とモラルは何の関係も無いのですね。

 これから辛くなるのは東芝の監査を担当していた新日本監査法人です。確かに虚偽の書類しか見せられていなかったとは言え、全体として数字を見渡すセンスのある監査責任者がいればこれだけ長期に渡る粉飾は見抜けたはずです。しかも報道によると今回の粉飾は期末近くに行われたものが多かったようです。そうなれば異常性が高くなり、発見も容易だったと私は思います。本当に見抜けなかったとしたら監査をしている意味がありません。早速ZAITENの最新号で新日本監査法人はメチャクチャにこき下ろされています。また月刊選択の8月号では「役立たずの監査法人」のタイトルで監査法人の不祥事が沢山指摘されています。監査法人に対する金融庁の締め付けがいっそう厳しくなると思います。

・マイナンバー

 先月号のメッセージで私が心配していた番号通知カードを紛失した場合ですが、この場合には個人番号の記載された住民票で代用が可能とのことです。しかしあと1ヶ月半で番号通知カードが本当に届くのか心配です。何しろ全国5200万世帯(5500万世帯という説もあります)に簡易書留で配達しなければなりません。私も知らなかったのですが、選挙の投票用紙って数パーセントは宛先人不明で返送されるそうですね。番号通知カードの場合はそれに加えて受け取りのサインか受領印が必要になります。受取人が受け取りに来ない番号通知カードが郵便局の本局にあふれるでしょうね。

 そして1億2千万枚の番号通知カードから1000万人の人が個人番号カードを取得すると予想されています。その予算は489億円です。計算してみると1枚当たり4890円です。と言ってもカードを作るのにそれほどお金がかかるわけではなく、カード製造を受注した大日本印刷と凸版印刷のコストは500円~1000円と言われています。残りは地方公共団体に対する手数料のようなものようです。でも個人番号カードの発行希望者が1000万人とは思ったより少ないと思います。東京駅100周年記念Suicaみたいに、また不足して大騒ぎになりませんかね?

・安倍総理の問題のある言葉の使い方

 よく安倍総理が「・・・だとしたら申し訳ない」という謝り方をしますよね。「不快な思いをさせたとしたら・・」とか「誤解を招いたとしたら・・」とか条件をつけますが、あれって本当に心の底から謝っていないからああいう表現になるんじゃないですかね。誤った発言をしたり、暴言を発したことによって謝罪する羽目になったくせに素直に謝らないのは本当に謝るのが嫌なんですね。戦後70周年の総理談話に「お詫び」が入るのかどうか楽しみです。

 また安部総理が「一般的に」とか「基本的に」という用語をよく使います。あたかもその通りにしかならないように聞こえますが、「そうならないことも考えられる」と言うように解釈しなければなりません。「一般に海外派兵は認められない」の意味は「海外派兵は例外的には認められる」、「基本的には自衛隊が武力行使を行うことはない」と言うのは「例外的には武力行使を行うことがある」、「今はホルムズ海峡以外には考えられない」は「将来はどうなるかわからない」あるいは「将来の首相はどう考えるかわからない」と解釈するとわかりやすいです。

 と言っていたら、今度は「絶対無い」「今後も無い」の根拠の無い断言連発です。コロコロ表現が変わる総理大臣です。

・エンターテイメント

 しかしこの夏のドラマはどれもこれも酷いですね。視聴率も軒並み10%割れで、5%を切っているドラマも幾つも出て来ました。10%を維持しているのは「花咲舞が黙っていない」だけで、要するに新企画は総てボロボロということです。テレビマンってセンスが無い人が多いんですね。というかどの局ももうネタ切れなのかもしれません。殆どのドラマがコミックのテレビ化でオリジナリティが無く、「来週が楽しみだ」と思わせるようなドラマがありません。ドラマ好きな私としては「探偵の探偵」だけはまあまあだと思っています。と言うよりも原作のファンですからね。原作と言えば「民王」は原作は面白かったんですけどねぇ。ちょっと遠藤憲一やり過ぎじゃないでしょうか?

 久しぶりに映画を見ました。「HERO」です。期待外れではないんですが期待通りとも言えないぐらいの出来です。最近フジテレビでは至る所でHERO特集やって宣伝に努めていますが、恐ろしくお客の入りが悪いですね。いくら平日とは言え、まだロードショーが始まって10日も経たないのに、六本木ヒルズのTOHOシネマの最も大きいスクリーンに僅か100人ほどの観客しかいませんでした。最近映画って不人気なのでしょうか?

 それにしても舞台設定と時期がまずいですね。東京は猛暑日が続いているのに映画のシーンは真冬です。またヒロインの北川景子は現在のドラマクールで「探偵の探偵」役では激しいアクションシーンを繰り広げています。それが映画の中では松たか子の妹分役ですから、キャラが噛み合いません。いくらテレビドラマと映画は違うと言っても一人の俳優さんを同時期に全く違うキャラで使うのはやめて欲しいと思います。しかしこう書いている間に映画の「HERO」のストーリーを忘れてしまうのですから印象薄いストーリーなのでしょうね。と言っていたら、やはり前作の半分の興行収入になりそうだとのことです。

 しかし9月5日封切り(最近こういう古くさい表現は使わないみたいですね)の「アンフェアthe end」は期待出来そうです。2006年にテレビドラマから始まったシリーズがとうとう完結します。果たして雪平夏美の父親を殺したのは誰なのでしょう?まさかウロボロスみたいに警視総監が犯人ってことはないですよね。



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