■還暦及び事務所開設30年を迎えて■

 新年あけましておめでとうございます。今年は私が還暦、事務所は開設30年の節目の年となります。29才で事務所を開いて30年、職業会計人としては大変波乱に富んだ面白い人生を過ごして来ました。とりわけ印象深かったのはやはりバブル時代です。あの異常さは今でも忘れられません。名門ゴルフ会員権の相場が軒並み1億円を超え、小金井カントリークラブはなんと4億円の高値をつけました。広尾ガーデンヒルズの坪単価が2000万円を超え、都内には一部屋10億円以上のマンションがゴロゴロしていました。それが不動産は3分の1から10分の1、ゴルフ会員権に至っては10分の1どころか倒産したわけでもないのに100分の1以下になってしまった名門ゴルフ場もあります。新設のゴルフ会員権を幾つも買い求めて自己破産に追い込まれた人も沢山います。本当に罪作りなバブルでした。株式市場は世界でも有数のマーケットですから一方的な値上がりにはなりませんでしたが、それに比べれば我が国の土地やゴルフ会員権は世界的なマーケットからみたらゴミのような存在でしたから、投機的な動きで破天荒な高騰劇を演じました。相続税評価額もうなぎ登り、その対策として買いたくもないアパートやマンションを買う羽目になった人も沢山いました。何もかも異常な世界でした。バブルは人の心を荒廃させ、誰もが財テクに走りました。いくらか慎重だった人が今でも生き残っています。しかしバブルの後遺症はまだまだ続いています。都内には地上げ途中で頓挫してしまった土地を今でも沢山見かけます。不良債権の元となった不動産もまだ総てが片付いたわけではありません。おかげで都内ではそれまで見かけなかった「コインパーキング」というビジネスが生まれました。バブル期に高額で募集したゴルフ会員権は殆どのゴルフ場が償還出来なくて倒産しました。

 本当に刺激的な時代でしたが、それを見てきたがために、現在のような時代にあって、私はより慎重なスタンスになっているのかも知れません。ここ数年間はリスクヘッジの話ばかりしているような気がします。バブル当時にNTTの株をメッセージで皆さんにお薦めしたこともありましたが、その後は値上がりを前提とした投資のお話をすることも殆ど無くなりました。2000年頃のネットバブルの時代には、「またか」と思わせるようなシーンもありましたが、ネットバブルの象徴であったソフトバンクや光通信の株価も100分の1まで下落しました。とにもかくにも大きな浮き沈みがあったこの30年でした。

 私は別に「何歳まで仕事をしよう」と決めていたわけではありませんが、大学を卒業して企業に勤めた同期は殆ど定年を迎えつつあります。個人的には現役としてあと何年仕事を続けられるかわかりませんが、私の能力を必要とする状況がある限り、世の中のお役に立っていきたいと思います。ただ役に立つ部分を上回る老害を与えてはいけないので、その見極めが自分では大変です。また昨年会計士試験の合格者を二人採用しましたので、雇用者としての責任も感じています。幸いにも子供達が「親の跡を継ぐ」などと言い出さなかったのでその点は気楽ですが、開業した頃と比べれば様々なネットワークで行う仕事も多くなり、簡単に辞められる状況では無くなりました。今後は少しずつ「社会に対して自分が何が出来るか」ということを意識しながら仕事を進めていくつもりです。

 早期退職をして自由な人生を楽しんでいる友人も多いのですが、まだまだ現役で頑張っている友人も沢山います。会計業界で見ると監査法人にずっと所属していた公認会計士は60〜63歳の定年とともに、仕事を止め、民生委員やNPO法人の監事をやっている人が多いようです。それに比べて税理士は働き者が多いのかどうかわかりませんが、「死ぬまで現役」という人が多くて、「引退」という言葉を聞きません。殆どの税理士は私と違って「生涯現役」のつもりのようです。

 私として辛いのは、「いつ引退しようかな?」というと周りの会計士達から「今だって引退しているようなもんだよ」と言われることです。



■通貨問題■

 年末からユーロ安が止まりません。あっという間の97円台です。ヨーロッパ中央銀行やら独仏首脳も色々と策を練っているようですが、もうこのユーロ破綻の動きは止まりそうもありません。と言っていたら「ユーロは破綻すると思っている」と発言したアホな閣僚が現れました。政治家にも立候補に当たって面接試験が必要なのではないでしょうか?

 とは言え、イタリアはともかく、このままではギリシャの破綻は明らかですが、この処理をどうするかによって今後のユーロの行方が見えてきます。とことんギリシャを支えるのか?それともギリシャを一度破綻させてその後支援の仕組みを整えるのか?その場合にユーロ圏に止めるのか?それともユーロ圏から離脱させて独自の通貨の発行を認めるのか?

 とりあえず来月に迫ったイタリア国債の大量償還がポイントとなります。たとえ借り替えが進んだとしても現在のような7%の高金利ではこの先イタリア財政が立ちゆきません。そして3月にはギリシャ国債の大量償還が迫っています。またイタリアの国債償還は2月ばかりでなく、3月も4月も続きます。4月末までに償還を迎える国債の金額はPIIGS(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)5カ国合計でなんと25兆円です。次々に迫り来る危機に対応していかなければならない欧州金融首脳は本当に大変です。それに今年は5月にフランス大統領選が控えており、対応を誤ればただでさえ接戦となっているサルコジ大統領の再選はありません。サルコジ大統領としては選挙を意識して、国益を重視した対応しか取りようがありません。

 ギリシャ、アイルランド、ポルトガルぐらいまではデフォルトしてもユーロを維持出来るかも知れませんが、スペインかイタリアがデフォルトしたらユーロは崩壊です。しかしこのような状況で笑っていられるのはメルセデスベンツやBMWといったドイツの輸出メーカーだけでしょうね。いくらイタリアがリラ安と言ってもフェラーリやフィアットも自国通貨がこれほど不安では為替差益を喜んではいられないと思います。

 また現在はどちらかというとドルに対するユーロ安から円がユーロに対して高くなっている状況ですが、ギリシャやイタリアがデフォルトした時に本当に大きな損失を被るのは米国の銀行です。よくギリシャ国債やイタリア国債を大量に保有しているドイツやフランスの銀行の危機が叫ばれますが、米国の銀行は相変わらずイタリアやギリシャのCDS(クレジットデフォルトスワップ)というデフォルトした時に支払われる保険の巨額な売り手となっていて、もしデフォルトした時には巨額の損失を被ることになります。その場合にはドル安になるばかりか、世界中の金融が逼迫する危険もあります。そうなるととりあえず安心して買える通貨は円だけということになって更に円高が進む危険性があります。

 現在円の暴落を回避するために我が国では財政再建だ、そのための増税だとか騒いでいますが、もし増税によって財政再建が進めば(進まないとは思いますが)ますます円高が進み1ドル50円ということも考えられます。頭脳明晰な財務官僚がいったいどの程度の円のリスクを考えて金融財政政策の舵取りをしているのか本音を聞いてみたいものです。

 日本についても年末から年始にかけて多くのテレビ局が特番を組んで、今後の日本の進む道を模索していましたが、何と言っても政治がこのような状況では何を言い合っても不毛な気がします。正月休みに今後の危機に関する書物を沢山読みましたが、最も納得できたのは元東京銀行の為替ディーラーの若林栄四氏の著書でした。若林氏は所謂チャーチストで日柄を最も重視します。全ての相場の動きは日柄で決まり、人が相場を動かすのではなく、相場が人を動かすと考えています。その若林氏のご託宣によるとキーポイントは2012年2月でそこで為替相場は歴史的な1ドル74円をつけ、それを大天井に円安の世界に向かっていくとのことです。ここでは若林氏のその他のご託宣には触れませんが、私にとってはそれなりに納得できる説明でした。

 しかし私としては上述のようにギリシャが破綻したときの米国金融機関のダメージが深刻なので、もしその時には現在より3円程度の円高で収まるような気がしません。また別の見方をすると2011年度が31年ぶりの貿易赤字に転落したことをきっかけに円安が進むかも知れません。もし来月1ドル74円をつけて、その後円安が進むようなら若林氏の意見を全面的に信用してみようと思います。その場合には円安にインフレも重なり日経平均はかなり上昇していくそうです。




■危機管理マニュアル■

 未曾有の大災害となった東日本大震災ですが、巷では近々関東圏に大地震が起こると騒ぎ立てています。私達は遠方での地震に対する対策は身につけたかも知れませんが、自分達が被災したときのノウハウはまだ完璧とは言えません。またこれも巷で騒がれている世界的な金融危機に対する対策も立てておかなくてはなりません。私どもの事務所では災害対策マニュアルと金融危機対策マニュアルを作成中です。但しこれらの危機は発生すればとてつもなく甚大で「備えあれば憂いなし」とはいきませんが、全く無防備でいるわけにはいきません。近々危機管理マニュアルを皆さんにご披露出来ると思います。

 とりあえずは1週間分の水と3日分の食料です。但し今回の東北地方のように津波の恐れのある低地にお住まいの方は自宅に準備していても流されてしまうかも知れませんので、それなりの対応が必要です。私は高層マンションの上層階に住んでいるので津波の心配はありませんが、幾ら備蓄していてもそこまで上がっていけるのか不安です。地下にトランクルームがありますので、そこに防災用品を収納していますが、停電の時に本当に電子錠が解除されるのかどうか不安です。また私のマンションの自転車置き場は地下2階にあってエレベーターで出入りするようになっています。ということは停電でエレベーターが動かない時には自転車は出し入れが出来ないということになります。よく回転式の駐車場やコインパーキングも停電の時には出庫出来ないと問題になりますが、身近な自転車でもこんなことがあるんですね。

 「危機管理マニュアル」というと殆どの方は「防災」を考えられるでしょうが、この1、2年で災害より恐ろしいのは「金融危機」かも知れません。金融危機に関して最も重要なことは「情報」です。氾濫する情報の中で最も信用出来ないものは週刊誌です。週刊誌は知らせるべきニュースより売れるニュースに飛びつきます。売れないニュースやスポンサーや政府を敵に回す記事は取り上げません。次に新聞、テレビですが、これも全面的には信用出来ません。これらのメディアがもう少し良心を持って報道していれば今回の原発事故であれほど多くの人が被曝することは無かったと思います。ただ政府や東電の報道を垂れ流して真実を追究しませんでした。3月12日の会見でメルトダウンの可能性に触れた中村幸一郎審議官を直後に交代させたことに関して追及すべきでした。そうすれば今回の事故が当初発表されたレベル5どころではなかったことがもっと早く明らかになったはずです。

 さてそうなるとどうやって情報を収集すればよいのでしょうか?政治や経済の情報を大マスコミと逆説的に捉えた日刊ゲンダイ等の夕刊紙も一つ候補に挙げておきます。日刊ゲンダイは週刊現代を発行している講談社の姉妹会社が発行しているにも関わらず、そのスタンスは大きく異なっています。他には真実については良心的なジャーナリストのサイトをまめにチェックするしかありません。孤高のジャーナリストの上杉隆氏は昨年末で筆を折ってしまいましたが、ネットでは彼の情報を入手することが出来ます。またオリンパスの粉飾事件の発覚となった記事を掲載した「FACTA」や「選択」といった書店では手に入らない雑誌が参考になると思います。

 最も早く金融危機のニュースを配信するとすればロイターか時事通信ということになるでしょうか?国債の入札未達という国内事情から日本の金融危機が始まればわかりやすいですが、そう簡単にはいかないと思います。いきなり深夜に世界中のどこかの市場で円が売られるとか、イタリア国債に大量の売り物が出たら、睡眠中の私達は出遅れてしまいます。また、危機の発端にしてもソブリンリスクから始まるのか通貨問題から始まるのかわかりません。総ての危機に、あらゆる時間に即座に対応することは困難ですから、予想される危機に対してはある程度のリスクヘッジをしておくことが必要ですし、各国の国債の入札日は注意しておく必要があると思います。

 そしてもし深刻な金融危機が起きたらどうするのか?私はとりあえず事務所を管理している不動産会社に退去通告を出して、神田辺りの安いビルへの引っ越しを考えようと思います。そしてATMへ走ってとりあえず現金を手にします。危機の大きさによっては貸金庫の中の物を総て取り出します。また手持ちの株式を全部売ります。先物やオプションを使って売りで儲けようと考える方がいるかも知れませんが、危機に関する情報の少ない素人は危機発生時には手を出すべきではないと思います。

 しかし今私が最も気にするのは北朝鮮情勢です。金正恩氏が指導者に就任してから北朝鮮の強硬姿勢が目立ちます。自分の存在意義を急速に示すためかどうかわかりませんが、特に隣国韓国に対する強硬姿勢は目に余るものがあります。そう遠くない時期に日本を威圧するためのミサイル発射実験でもやらかすのではないかと心配です。まだ権力体制が安定していない中で、軍部が勢力を誇示しようとして暴走することも十分考えられます。韓国より先に我が国に何か仕掛けてくることは考えにくいですが十分な警戒が必要です。これに関して私達は何のリスク管理も出来ません。先方の政治体制が早く安定するのを願うばかりです。そういう意味から言ってもまだまだ在日米軍は抑止力として必要だと思います。

 もう一つ私たちの理解を超えた危機があります。マヤ暦による2012年「人類滅亡説」です。また、「1999年に恐怖の大王が空から降ってくる」と言われたノストラダムスの大予言ですが、実は計算が13年間違っていて、今年こそノストラダムスの大予言による地球滅亡の年であるという説もあります。心配性の方は一生懸命悩んでみて下さい。世の中心配すればきりが無いという見本をお知らせしました。



■ちょっと思ったこと■

 ・年末から首都高を走っていると面白い警告表示が目につきます。「追突事故多発、前を見て運転しよう」そんなに前を見ないで走っている人がいるんでしょうか?

 ・もう一つ笑い話ではないのですが、これほど大騒ぎされている年金に関して大問題が一つあるのに誰もそれに触れようとしません。男女で平均寿命が異なるのはご存じだと思います。我が国では女性は86歳、男性は79歳と7歳の開きがあります。民間の総ての保険商品と年金商品はこれを考慮して保険料を決めています。それに対して年金数理の骨幹をなす年金の保険料は男女同一です。これは大問題だと思いますが誰も言い出しません。明らかに男性が損をして女性が得をしています。何で年金制度を始める時に厚生省はこれを考慮しなかったのか不思議でなりません。

 ・年末年始にかけて家庭で年賀状の印刷をしましたが、やっぱり1万円のプリンタのインクが5色で5千円っておかしいですよね?

 ・最後に、私の好きな「超一品.COM」というサイトで先日家庭用ワインセラーが売られていましたが、その時の宣伝文句が「私の夢は若い女性とヴィンテージ物のワインを飲むこと、なのに現実はヴィンテージ物の妻と若いワインを飲んでいる・・・」でした。笑えたのでご紹介します。





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